7 繋ぐ(Green) ページ34
磨いて、彩って、今を生きる。手をつなげる日が来たら、また愛し合おうね。
手書きの歌詞に時々視線を落としながら、ギターを弾く姿をじっと見つめる。ギターってどんな音なのか、この人はどういう声をしているのか、俺には知りようもない。
でも、隣で聴いている元太の表情から、きっとすごくいいものだって想像することはできた。
しばらくすると、足を止めて歌を聴いていた周りの人たちが拍手を始めるのが見えた。俺もそれに合わせて、両手を打つ。歌が終わったんだろう。歌っている間は切なそうだった顔に満足そうな笑顔が広がっていて、俺の方を見るとゆっくりこっちに近づいてきた。
『今日は聴きに来てくれてありがとう。』
『こっちこそ。歌詞カードまで作ってくれて、ありがとう。』
『手書きだけど(笑)。』
『それでもありがたいし。てか、クラの字結構きれいじゃん。』
手話で話していると、元太が不満そうな顔で俺の服の袖を引っ張った。
『待って！俺も混ぜて！……ていうか、何？もうあだ名で呼んじゃってんの？いつそんな仲良くなったんだよ…。』
幸運のストリートミュージシャンに近づくなんて、とつぶやく元太を見て、クラが笑った。
『海人から聞いてたけど、なんでそんな大げさな呼び方するの？(笑)』
『だって、めっちゃ好きだから！ファンなんです！』
照れくさそうにはにかむクラの前で、元太はまだ興奮気味に話し続ける。
『今日歌ったの、新しい曲ですよね？マジ、よかったです！』
『ほんと？よかった…！』
今日一嬉しそうに笑うと、クラはギターケースを背負い直しながら言った。
『この曲、友達の話からイメージして作った曲なんだ。ちょっと女々しいかなと思ったんだけど……、そう言ってもらえてほっとした。』
クラは、どこか遠くを見るような顔をしている。
俺は、もう一度「手と手」とタイトルのついた歌詞カードに視線を落とした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 169人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おさと(プロフ) - 6chanさん» 6chan様、コメントありがとうございます！短編のシリーズからお読みいただいていたとのこと、とても嬉しいです😭引き続き、こちらの作品にもお付き合いいただけますと幸いです！ (2023年3月9日 22時) (
レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
6chan(プロフ) - 短編の時から好きなお話でした。が、まさか、更に障害系要素が増えて、更にこれからが楽しみです！ (2023年3月9日 0時) (レス) id: f726c31193 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おさと | 作成日時：2023年3月4日 19時
