人生二回戦目は求めてない。2【名探偵コナン】

96話 ページ47

“Aさん、今日休みだったよね？”

“そうだね”

“家にいる？”

“ガレージで洗車中”

そのメールのやり取りの後
すぐ着信があった

『事件ですか？事故ですか？』

『その聞き方やめて』

前科しかないだろ君

『それで？今日はどっちですか工藤君』

『どちらかと言えば事件？』

『何で疑問形なの』

『今目の前にAさんがいるんだけど』

大事件である

そんな訳ないだろ
今私はまさに自宅のガレージで
ベコベコの車体を直して
整備から戻ってきた新車GTRさんの
コーティング中真っ只中である

『どこにいるの、その私と2人っきり？』

『うん』

『人気は？』

『ないよ』

『5秒待って』

そう伝えて通話を切る
今の服装は
上にタンクトップ
下は作業着のズボン

手袋を脱ぎ
近くのパーカーを羽織る

そしてそのまま

｢久しぶり工藤君｣

｢久しぶりAさん｣

｢は？｣

飛んだ

隣には小さい工藤君
目の前には私によく似た私

突然の出現に驚いているところ悪いが
は？はこっちの台詞だ
悪趣味な人もいるものだと睨みつける

そして気が付いた
つい先日この呪力を見た事がある

｢その馬鹿そうな顔した私はく｣
｢あー！すみませんでした！｣

1度だけ聞いたその名を言おうとすれば
突然私の顔をした黒羽君に口を塞がれる

なんで？

｢だから言ったろキッド、Aさんはやめとけって。｣

キッド？

｢そういやAさん、キッドとも顔見知りだったんだな。｣

何の話をしてるんだと
必死で私の口を塞ぎ続ける
至近距離にあるそっくりな顔を見る

すると焦った顔のまま
私に一瞬視線を寄越し片目を瞑られた

キッド？それよくテレビでニュースになってる
怪盗キッド？

君怪盗キッドなの？

久々によく回る自分の思考に感心した

話を合わせろという意味だと理解し
口を塞いでる私より一回り大きな
手の甲を抓って解放される

｢工藤君が誰にでも紹介するから痛客しか来ないんだけど。｣

｢1回痛い目みせてやりたくて｣

嫌いなの？工藤君

｢何で私じゃないって分かったの？｣

｢やけに機嫌悪そうにしてるし、あと歩き方が違う。｣

｢歩き方？｣

変なのだろうかと
突然普段の歩き方が気になりだす

｢重心移動とか姿勢とか全然違うよ｣

｢へぇ｣

ふと隣の彼を見ると
若干猫背でやる気のなさそうな立ち方をしている

｢よく見てんなぁ坊主｣

｢るせぇよ｣

声までそっくりなのは
本当に鳥肌が立ったが

歩き方で見破れるとは
工藤君が恐ろしくなった

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