君が出すその色は (ページ15)

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『すみません…お菓子もスマホも…ハンカチも…』

「全然。こっちこそ部屋に入ったりしてごめんね。」

足を伸ばして座ってもらい、赤くなっている部分に濡らしたハンカチを乗せる。

「わぁ…これ全部絵の本？」

『あ、そうです。本屋さんにある本の方が勉強になるので…』

一階に行っている間に片付けたのか、端に追いやられているさっきの本。表紙を見れば絵の本だった。

「見てもいい？」

『いいですよ』

沢山の絵が載ってそうな分厚い本を見ると、食べ物や風景、空、人物、色んな絵が描かれていた。

「…すごい……」

『面白いですよね。色使いとか人によって違うんです。何百色も使っている絵もあれば、十何色しか使っていない絵。人によって違うから見るだけでも楽しいです。』

「Aさんは最大何色使った事があるの？』

『大きな絵は描いた事がないので100色は無いですが、20色ぐらい使った事はありますよ』

「それは多いの？」

『絵のテーマにもよります。人や背景を入れたいなら絶対50色以上はいきます。私が描いたのは空と海だけなので…。』

「空と海だけで20色？凄いね。どこに何色使うの？」

『太陽の光の加減で海の底の色を表現する時とか、表面の光の反射とか…今ありますよ、見ますか？』

そう言って積み立てた本の横に飾っている筒状のケースを取り、中から紙を出し広げてくれた。

「わぁ…！凄い…！」

本当に空と海しか書いていないのに写真かのように綺麗に描いてある。

「めちゃくちゃ綺麗だね。写真かと思ったよ。」

『褒めすぎです(笑)上手い人はもっと上手いですよ。』

「本当に綺麗な絵だよ。あ、よく見るとこの辺とこの辺色が違うね。」

『そうです。この辺の海底の色とこっちの海底の色もちょっとだけど違うんです』

「本当だ…凄いね…」

『実際に海沿いに行って描いたので表現しやすかったです。写真だけだと分かりにくくて。」

「そうなんだね。海が好きなの？」

絵を見ていた目線を彼女に向けてそう聞いた時、彼女も顔を上げ僕の目を見ながら

『海というか、青色が好きです』

と答えた。

________________ドキン

決して自分に向けられたわけじゃない"好きです"

に胸の奥がまた痛くなった。