第312話 感性を伸ばす ページ34
「ねぇ、まずは食べない？いつもの楽しい食事じゃなきゃ、寂しいよ」
不穏な空気を破ったのはカナヲちゃんだった。
彼女の言葉に全員が頷く。
いただきます、と、各々がつぶやいた。
『うん、美味しい。アオイさん、いつもありがとうございます』
「え、はい、……どういたしまして？」
『きよすみなほちゃんも、カナヲちゃんもね。いつもお手伝いしてて偉いなぁって思います。本当にありがとう』
「「「こちらこそありがとうございます！」」」
「ありがとう、どういたしまして」
あやめも、俺も。
温かくて想いのこもった食事は、縁遠かったと思う。
だから好きだった。楸さんのご飯もだし、ここで食べるご飯も、好きだ。
「なぁ、菖蒲。何で急にあんなこと言うんだよ。いつも一緒だったのに、……一緒に帰ろうって言ったのに、さぁ」
『別にみんなの事が嫌いになったわけじゃないんだよ。もう会いたくないわけでもない。』
「………」
『皆と戦って生きてきたのは、辛いこともあったけど、すっごく楽しくて温かかった。でも、もっと色んなものも見たいなぁって思って』
俺は結構インドア派だったんだけどな。
手元を動かす作業ばっかりで……それも好きでやっていたことだったけど、ここに来て、色んなものを見てきた。
色んなものを知った。
『……俺が君たちと離れたいと言ったら。多くを見ることと君たちを天秤にかけて、一方に傾いたから決断したんだと……、君たちは、そう思う？』
「それは、！」
『思わないよね、君たちは優しくて強い子なので。俺だって比べて選んだわけじゃない』
箸を置いて、きちんと前を見た。
これは、俺の意思だ。
誰かの思いを受け継ぐために選んだ道じゃない。
『色んな物を見て、聞いて、感じて。世間を知って、触れて。新しいものを見つけます。変わり続けます』
『俺にはそれが、合ってるってだけ』
それが、人のためになればもっと良いな。
いつかあやめが見つけた夢と、ほとんど同じことだけれどね。
あやめの代わりに進むわけじゃ、無いんだよ。
『どうですか。………止めたい？』
にこり。
笑んで、首を傾げた。
「それもう聞いてないじゃん……」
「そうだな。止めるなと言ってる」
「悪い奴だなお前」
「菖蒲さんそういう所あります……」
あれ、みんな冷たくねぇか……。
僅かに冷や汗をかきつつ笑みは絶やさないでおく。
ここで笑顔を止めると毒の雨に心が死んでしまいそうだからである。
❁⃘*.ﾟ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リナ(プロフ) - ゆぅあ(o・ω・o)さん» 一気読みありがとうございます〜！！完結間近ですが最後までよろしくお願いします！頑張ります……！ (2020年11月28日 15時) (
レス) id: cb61b31578 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 昨日このシリーズの小説を見つけたのですが、はちゃめちゃに面白くて今日読破しました！これからも頑張ってください！！！ (2020年11月28日 10時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リナ | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2020年8月29日 14時
