第307話 数えきれない感謝 ページ29
❁⃘*.゚
『……あの、天元さん』
「あ?」
『(だからガラが悪ぃんだよな)』
話しかけられた時の返事ではないだろそれ!!
それは一旦置いておいて。(切り替えの速さは天下一品)
『お礼が言いたかったんです。たぶん、色んな分野で助けてもらったという点では天元さんが一番なので』
「なんか照れるな……」
『照れてもらって結構。まず、ぼっちの楸さんのお友達になってくれてありがとうございます』
「一つ目がそれかよ」
だってあの人柱の中でも謎に嫌われてるんだもん。
物好きな天元さんくらいしか友達になってくれなかったよ、きっと。
『……それから。あの人が信じてくれた俺を、信じてくれてありがとうございます』
いつの日か、天元さんにかけてもらった言葉だった。
俺は全く信用されてなかった。
無力だし、自分勝手だし、たぶん、生き残ったのが楸さんではなく俺だったから。
護られるだけの家の者だったから。
『やっと証明できた。楸さんが俺に繋いでくれたものも、貴方があの時、榊との戦いを俺に任せてくれたことも、間違いじゃなかったって証明できた』
『俺は死にませんでした。この血を必要な時まで途絶えさせず、ちゃんと活用出来ました。御館様も、楸さんも、天元さんも、裏切らずに済みました』
『………俺に託してくれて、ありがとうございました』
深々と、頭を下げた。
あぁ、目の奥がツンとする。
喉の奥がギュッと締まる。
楸さんが託したのは、この人じゃなく俺だった。
それはきっと悔しかったし、守れなかったことも、悔しかった。
でも、貴方の覚悟ごと俺は榊と対峙した。
そして全てを、終わらせることが出来た。
『、っわ』
いつの日かと同じように胸筋でいっぱいの景色。
あの日とほとんど変わらない固さに苦笑する。
それから、頭上に振る声を聞く。
「すげぇ奴だよ、お前は」
「本当に悔しかった、あいつの任務、元々同行するつもりだったんだ」
『………え、』
顔を見上げようとするも、何故か強く締められて見れなかった。
ほんの少し、声が震えていた。
「別任務が入ってな。お前なら大丈夫だろ、なんて言って話したのが別れになった。あいつの因縁だったとか、そんなことにも気が付かずに」
「後悔ばっかりしてたよ。俺がいれば、あいつが死ぬことは無かった」
「もっと意味のある場所で死なせてやりたかったなんて、バカみてぇなことも考えたかな」
意味。
その言葉を、脳内で反芻する。
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リナ(プロフ) - ゆぅあ(o・ω・o)さん» 一気読みありがとうございます〜!!完結間近ですが最後までよろしくお願いします!頑張ります……! (2020年11月28日 15時) (レス) id: cb61b31578 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 昨日このシリーズの小説を見つけたのですが、はちゃめちゃに面白くて今日読破しました!これからも頑張ってください!!! (2020年11月28日 10時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年8月29日 14時