検索窓
今日:11 hit、昨日:9 hit、合計:17,220 hit

第303話 思い出なぞる ページ25

『ともかく、元気そうでよかった』

「お前もな。あの時起こった出来事、何となく察しはついているが……」

『そう……あやめが代わりに。琥珀の力、俺の中には残っていなかったけれど、あやめの中に戻っただけらしいんだよね』


愈史郎くんが不思議そうな顔でこちらを見た。
俺も まだ完璧に理解した訳ではなかったけれど、持ち合わせた語彙力を全て注いで説明をする。


『琥珀の力と梛の力は本来別々にあるはずのものだった、って。それが……元に戻っただけだ、って。だからあの時、力を使ったのは俺じゃなくてあやめで』

「……」

『この世界の俺の肉体が死ぬ瞬間、あやめが俺の肉体に入った。そして意識ごと死んでしまう0コンマ数秒前に、琥珀の力を使った』

『そして、俺が再びその肉体に戻る前に、1度死体と化したそれを君が生き返らせてくれた。』


複雑そうな顔だった。
俺を救ったのは、確かに、あやめだ。
でも____君がいなかったら、それでも助からなかったと思う。


『君は命の恩人だ。ありがとう』



「……そうだな。そして、それ以上にあやめはお前の恩人だ」

『それは、そうだけど!でも君にも感謝してて……』

「分かってるよ。俺への感謝は伝わってる。それから、それ以上に大きすぎるくらいのあやめへの感謝と罪悪感も。」

『……っ』


今度は俺が表情を歪ませる番。
罪悪感、か。
俺も、他の人も、1度も口にしなかったそれを……彼は遠慮することなく口にした。

正しくその通りだった。


「何もおかしくない。助けられて喜ぶことも、感謝することも、ほんの少し、後ろめたく思うことも。」

『……、』

「感謝の度合いに、大きさに違いがあることも、口にしないと耐えられないくらい抱えてしまうことも」

『…ねぇ……』



「おかしくない。」


ポン、と、頭の上に手を置かれた。
撫でられるではなく、表情も動かずに手を置かれた。
も、物置き……。



『……なんか、俺のこと泣かせようとしてない?』

「バレたか」

『こいつゥ……!!』


ブレねぇ!!励ましてくれてるがやはりブレねぇ!!!


「……向こうの世界は?大丈夫なのか」

『うん。琥珀の力があった間はね、向こうの楸さんの存在は思い出せても、どんな人だったかは覚えてなかったんだけど』


『今はよく覚えてる。こっちのあの人とは全然違う、違うけど、同じくらい強い兄さん』





『かっこいい、自慢の兄さんだから。
母さんのことも、任せられる』



少しだけ、寂しいけどね。

第304話 美術部の彼→←第302話 彩るものに



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (43 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
56人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 男主 , リナ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リナ(プロフ) - ゆぅあ(o・ω・o)さん» 一気読みありがとうございます〜!!完結間近ですが最後までよろしくお願いします!頑張ります……! (2020年11月28日 15時) (レス) id: cb61b31578 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 昨日このシリーズの小説を見つけたのですが、はちゃめちゃに面白くて今日読破しました!これからも頑張ってください!!! (2020年11月28日 10時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai  
作成日時:2020年8月29日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。