第300話 菖蒲 ページ22
❁⃘*.゚
強く抱き締められる。
俺が今まで散々逃げて隠してきたせいで、未だにこのタイミングでとっとこ逃げないか疑われているのだろう。
絆はあるけど信頼が全く無いな……???
ふと視線をあげれば、どうしようか迷っている様子の禰豆子ちゃんがいた。
そうだよな、男3人が抱き締めあってるのは気持ち悪……じゃなくて、居心地悪すぎるよな。
『禰豆子ちゃん、ありがとう』
「えっ?私は大したこと……」
『ううん。そんなつもりなくてもね、沢山助けられました。だからありがとう。』
って言っても、身動き取れないけど。
何とか手を伸ばしたら、禰豆子ちゃんは戸惑いながら手を繋いだ。
「……撫でてもらった方が、良かったですかね。」
眉を下げて、恥じらいの混ざった笑み。
鬼だった頃は、特に気にせず頭を撫でていたりしたけど。
禰豆子ちゃんも小さい子みたいにうれしそうに笑ってたな、なんて。
『あ、やば』
「ごめんなさい!泣かせてしまって……!!」
「あ、菖蒲!ほら、怖くないぞ〜!大丈夫だぞ〜!」
『俺への扱いが赤子で草なんだが??』
我妻くんは禰豆子ちゃんと繋いでいる手を放せとギャギャー騒いで、伊之助くんは泣いている俺を見て炭治郎以上に焦っている。
『(そう、だよなぁ)』
陽の光の下で笑ってる、禰豆子ちゃん。
戦いが終わって、無くなったものは多いけど、残ったものだって、多かった。
何も終わってない。
たくさん、たくさん、続いているのに。
俺だけが、全部無くしたみたいに塞いでた。
『馬鹿みたいだ』
ぷつん、と、音がした。
硬い糸を、何かが断ち切ったような音。
風が吹いて、赤い耳飾りが揺れた。
「……菖蒲」
穏やかな笑みがこちらを向いた。
優しくて、温かい、声だった。
『なんか、しんみりしちゃうな。ぜんっぜん涙が止まんない』
「いいよ、泣いてて。弱音吐いたりとか、忙しいくらい色んな音がすんの。菖蒲らしいからさ」
『なにそれ、恥ずい』
「子分は……アヤメは、考えすぎてる時が一番めんどくせぇ。俺様がよく見てやらねぇとダメだからな!」
『うん、お世話になってます』
あやめ。
君の分も生きる。
でも、君の代わりにはならない。
「菖蒲、笑ってくれ。」
君の望みが、ようやく分かった。
『ありがとね。』
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リナ(プロフ) - ゆぅあ(o・ω・o)さん» 一気読みありがとうございます〜!!完結間近ですが最後までよろしくお願いします!頑張ります……! (2020年11月28日 15時) (レス) id: cb61b31578 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 昨日このシリーズの小説を見つけたのですが、はちゃめちゃに面白くて今日読破しました!これからも頑張ってください!!! (2020年11月28日 10時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年8月29日 14時