第296話 動かなくなったものは ページ18
❁⃘*.゚
アオイさんが部屋を去ってから、彼女の言葉通り外に出る。
窓からじゃ遠くて見えづらい、桜の木を見に行くために。
部屋に置かれた松葉杖を使って、今までの倍の時間をかけて外に出た。
『……やっぱ空気、ちょっと違うな』
部屋の中とじゃ違う。
ちょっとだけ気分転換になるかもしれない。
桜の木の下にたどり着いて、何となしに上を見上げた。
現代じゃ通勤電車で桜並木を見かけたくらいのものだったけど。
「おーーーーーい!!!」
桜の木綺麗だなー。
やっぱ花見はしたいよなぁ。久々にお酒飲みたい。缶ビール飲みたい。こっちじゃ未成年だからダメか。そもそも缶ビールとか無いか?
「おい!無視すんな」
『あれ、幻聴じゃない』
「菖蒲!外出ていいの!?元気になったの!?」
『我常にベリベリ元気』
「こりゃ重症だな」
何でだよ。
真顔で言うから余計に気味悪いとか言うなよ。
さっきまでのシリアスモードどこ行ったんだよ!!(結局それ)
『足以外に悪いところ見えます?ほんとに元気なんですよ、周りが心配しすぎなだけ』
「頭おかしくなってんだろーが」
『言い方。顔と言ってくれ』
「顔はいつも通り綺麗な顔だわ」
『やめろ』
よりにもよって俺を見る目が若干ズレてるこの2人に遭遇するか。
適当にあしらって戻ろうかと思ったけど、………思った、けど。
『確かに、頭おかしくなってら』
「いや、冗談だぞ?それで気に病むなよ……?」
『俺の精神は豆腐か。……それなりに合ってるけど。そうじゃなくて』
視線を桜の木に戻した。
単純に、この人たち相手に真剣な話をするのがむず痒かっただけ。
『わざわざ避ける必要、ないんですよ。あんた達は面倒だけど、でも、避けて部屋に戻るほどじゃないのに』
「「……」」
『今、さっさと部屋に戻ろうって思っちゃったから。つまりは1人になりたいってことなんだろうなって』
『ほんと、おかしくなってんな』
あーあ。言ってしまった。
ダメだなぁ。
正直、今の自分を元に戻すすべが分からない。
「ま、これは俺がどうこうしてやれるもんじゃねぇわ。俺は楸とは親友だったが、お前とは違うしな」
『……』
ふい、と、彼に視線をやる。
すました顔。腹立つ。(何故)
「お前をどうにかすんのは、まぁ最終的にはお前なんだろうけど。その手を引くのはお前じゃねぇ、俺でもねぇ」
『………じゃあ、誰』
「その辺にいるヤツら。」
そう言ってから、彼は蝶屋敷を出た。
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リナ(プロフ) - ゆぅあ(o・ω・o)さん» 一気読みありがとうございます〜!!完結間近ですが最後までよろしくお願いします!頑張ります……! (2020年11月28日 15時) (レス) id: cb61b31578 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅあ(o・ω・o)(プロフ) - 昨日このシリーズの小説を見つけたのですが、はちゃめちゃに面白くて今日読破しました!これからも頑張ってください!!! (2020年11月28日 10時) (レス) id: f45915f976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年8月29日 14時