第140話 〈進む方向〉 ページ47
『……そう、なの』
「あぁ。記憶喪失になっちゃう前のあやめも、さらけ出すのは苦手なみたいだったな」
「なるほど……なら俺は、あやめを心の底から笑わせることを頑張ろう!」
『え……、あ、』
ニコ、とこちらに向けて笑う炭治郎。
菖蒲も、そうだったのか。
きっと意識的にそうしているわけではなくて、無意識に人にさらけ出すことを避けているのだろう。
『(……なんだ、菖蒲も全然不器用じゃん)』
缶コーヒーを握る手に力が籠った。
この感情、なんて言うんだろう。
安堵だろうか?嬉しい……気持ちだけではないんだけれど。
『楸。……ひとつ、聞いていい』
「……どうぞ。」
菖蒲は、許してくれてる。
そしてこれから僕が進む道も、きっと。
『もし僕の記憶が戻って……性格も前みたく戻ったら、楸はどう思う?』
「……」
よく飲んでいたらしいコーヒーは苦くて飲めない。
彼が頑張って手に入れたアニメの技術も、僕には残っていない。
『(……そう、必要とされていないって、ずっと)』
「嬉しい。けどそんなこと、もしもの話だ。」
『(そのもしもは、起こそうと思えば__)』
「仮に起こっても、あやめはあやめだ。君がここにいる以上、俺は君をあやめと呼ぼう」
……まるで、全部お見通しなみたいに。
なら、ここにいてもいいのか。僕が、あやめが、ここに___
「な、泣いてるのか!?大丈夫か、あやめ!」
『え、僕、泣いてる……?』
「これじゃ俺が泣かせたみたいだろ……?」
………ありがとう、菖蒲。
僕、やりたいことを見つけたんだ。
ただ剣を振ってきただけ、外の世界を見ることすら出来なかった僕に、それが可能かは分からないけれど。
_____あやめなら、出来るよ。
僕の背を押したのは、菖蒲だけじゃなかった気がする。
あの日、僕を守ろうとした、僕が守ろうとした___……
❁⃘*.゚
「……彼の記憶、戻らない可能性が高いかと」
「そうですか……」
夕刻。
病室に戻ろうと歩いている途中、医師と母の話し声が聞こえた。
間違いなく僕の話題だ。
「
「いえいえ、そんな。私もあやめも、ずっと前向きに思っていますから。」
『(四葉……って、誰だろ)』
どこかで聞いたことがあるような、でも全く思い出せない。
これは考えても出てこない気がする。
『(……前向きに)』
進まなければ、いけない。
楸が残した言葉のように。
❁⃘*.゚
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リナ(プロフ) - モノクロさん» コメントありがとうございます!!泣いていただけたら本望です!()ギャグ混じえつつ急にシリアスぶっ込みますので温度差にお気をつけください!そして夜に寝ましょう!不規則生活!!() (2019年10月28日 10時) (レス) id: bdf7177f23 (このIDを非表示/違反報告)
モノクロ - こんなん…泣く、泣いてしまう(号泣)菖蒲くんもあやめくんも大好きですなんなら全員好きですけどねッ!!今後の展開が楽しみで昼しか寝れないなぁ!← (2019年10月28日 1時) (レス) id: 6f839a2af7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2019年10月16日 17時