ちょっとワケアリな新婚夫婦

天職 ページ46

『♪つっぱりハイスクール ロックンロール』

「最近お気に入りだね、それ。」

洗濯物を勇斗さんと一緒に畳みながらつい口ずさんでしまったのは「ツッパリHigh-School Rock'n Roll」。皆さんご存知、横浜銀蝿さんの曲で「劇場版今日から俺は！！」の主題歌にもなっている。

『映画を観に行った日からずっと頭を離れなくて。』

「あー確かに頭に残るよね。あと歌上手いからビックリしてる。」

『いやいや……ありがとうございます。』

「振り付け覚えた？」

『それが覚えてしまったんですよ…！！！』

動画サイトで勇斗さんの動画ばかりを観ているせいかおすすめ動画に振り付け師さんが踊っている今日俺ダンス動画を見つけてしまって何十回と見ていたらいつの間にか振り付けを覚えてしまっていた。不可抗力だよね。

「えー見たーい。」

『嫌です。』

「俺も一緒に踊るから。」

『洗濯物畳み終わったらやりましょう。』

「変わり身早っ。」

そこで私はふと疑問に思ったことがある。

『私は女の子の方の振り付け覚えてますけど勇斗さんは踊れるんですか？』

「うん、三橋伊藤コンビの方ね。」

『それと踊ってどうするんですか？』

「ビデオ撮って、疲れた時に観る。」

『……………………なるほど。』





洗濯物を畳み終え、いざ。

「いくよー？」

勇斗さんがスマホのビデオを開始してから、音楽がかかり出した。





「………かわいい…。」

『何回見るんですか！！もう！！』

スマホをテレビに繋げて撮り終えたビデオを何度も見ている勇斗さん。
ソファで二人並んで座っている為、勇斗さんと一緒に見る羽目になった。

「踊ってる時、表情くるくる変わるね！」

『歌ってる時と踊ってる時は何か雰囲気にのまれちゃうんです…。』

昔から感情の起伏は激しい方ではなかったが、歌っている時と踊っている時は表情が変わっているらしい。自覚はないが、友人や家族には度々指摘された。

「案外Aは女優の才能あったりしてね？」

『女優、ですか…。』

勇斗さんの言葉に、少し目を見開く。

私は小さい頃から社交的ではなかったので一人遊びが好きだった。
つまり、芸能の世界など考えたこともなかったのだ。

『そういうのは見目が良くて社交的で明るい人がやるものでしょう。私は向いてませんよ。』

「そうかなぁ？女優さんにだって色んな形があって良いと思うよ。少なくともAは可愛らしい顔してるしね。」

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