ちょっとワケアリな新婚夫婦

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あの後すぐにマネージャーさんから「磯村と奥様は映画を観ずに劇場を後にした。」とツイートがされ、映画館に人が集まる騒ぎは僅か数分のことだった。



『……勇斗さん。』

「とりあえず色々考えるのは映画見終わってからにしよう？折角来たし、俺も相良として頑張ってるから。」

『…』

隣に座る勇斗さんを不安げに見上げるけど、優しく笑って頭を撫でられたら何だかどうでもよくなってきちゃって…

すす…、と手を繋いでみた。

「……。」

勇斗さんが指を絡めて恋人繋ぎに変えてしまう。

『…そうですね。折角来たんですから楽しまないと損ですよね！』

上映５分前のアナウンスを聞きながら隣の勇斗さんに笑いかけたら、勇斗さんも安心したように笑って頷いてくれた。





帰りはマネージャーさんが裏口まで車を持って来てくれたのでそのまま家まで送っていただく事に。

後部座席に私と勇斗さんが乗り込んで、シートベルトの着用をバックミラーで確認したマネージャーさんが車を発進させた。

『すみません、わざわざお手数おかけしてしまって…。』

「いえいえ、うちの磯村が迷惑かけてませんか？」

『あ…、』

「…おーい。Aが答えにくそうにしてるからやめてー。」

『そんな…迷惑だなんて…一切ありません。…今日の映画も私が観たがっていたから彼が連れてきてくれたんです。…私が甘かったんです。本当にすみませんでした…っ…。』

自分の認識の甘さが悔しくて思わず膝の上の手をギュッと握る。

「…A、」

「えっと、Aさんでしたっけ？奥様のお名前。」

勇斗さんの声に被さってマネージャーさんの声が通った。

『…はい。』

「数回しかお会いしていませんが、私はAさんが磯村の奥様で本当に良かったと思っています。」

『…え？』

「礼儀正しくて、謙虚で、何よりも"俳優としての磯村勇斗"をとても大切にしてくれているのは伝わってきています。磯村から、付き合ってからも外出する事は殆ど無く、常に人目を気にしてくださっていたと聞いています。」

『いえ、それは当たり前のことですから…。』

「そんなことありませんよ。普通のカップルが出来ることを出来ない事に対して、貴方から不満や我儘が溢れたことがないのだと磯村も言っておりました。外デートも出来ない、付き合っていることや結婚したことは誰にも言えず、二人でいる時間も満足に取れないでしょう？」

『…そう、ですけど…でも…』

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