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その少女と目を合わせた瞬間福沢は息を呑んだ
紅いはずのその瞳は酷くにごっておりまるで深淵を覗き込んでいるかのように錯覚してしまうほどだった
幼い子供がする瞳とは思えずほんの少し戸惑いを見せた福沢に少女は小さな、けれど凛とした鈴のように可愛らしい声でこう語りかけてきた
「……あなたも、わたしをつかまえにきたの?」
「……いや、私は偶然そこを通りかかっただけの人間だ。貴君に何か危害を加えるつもりは一切ない」
福沢は子供の扱いにあまり慣れていないその為か普段大人に接する時と同じ態度で接することになってしまった
少女は福沢の云っていることがイマイチ理解出来ていないのか不思議そうに首を少し傾けながら此方を見つめている
福沢が再び口を開こうとしたその時、少女がその声を遮った
「……あなたはきっとわるいひとじゃない。だってほかのひとたちは、わたしとめなんてあわせてくれなかった」
そう云って少し安心したのか少女はまた冷気を弱くした。今度は肌に当たるのが心地いい冷たさだった
この子は一体どんな環境でここまで育ってきたのだろうか、この子は何に怯えているのだろうか
気になることは沢山あったが今はそれよりもこの少女をどうしても守ってやりたいという庇護欲が芽生えていた
「名はなんという」
「……………A」
「そうかA、よい名前だ」
慎重に少女の頬に手を伸ばす
初めはその小さな体を可哀想なほど震わせていた少女だったが、福沢の体温が伝わったそのとき深紅の瞳から大きな水晶のような涙を流した
「A、貴君さえ良ければ家へ来るといい」
「ほんとうに……?」
その瞳はまだ不安げに揺れていたが福沢が優しく微笑みかけると涙で濡れたままの頬で福沢の手に擦り寄りながらAは首を一生懸命縦にふった
夜空に瞬く星々が彼女、Aの幸せを願いそして福沢との運命の出会いを祝福している
その日、小さな少女と少女をおぶる長身の男の影が月明かりに照らされてぼんやりと浮かび上がっていた____
(………遅くなった。乱歩、実はだな……)
(おかえり〜お風呂と着替え準備しといたよ)
(………)
(僕はいいよ。妹が出来たみたいで嬉しいし)
(………そうか)
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作者名:レイ | 作成日時:2019年1月16日 23時