【東京喰種】色んなアナタと【短編集】

太陽／【滝澤政道】 ページ29

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「そんで、真戸の奴が…」


また真戸さん?。そう笑う彼女は東A
滝澤宅の隣に越して来たことから互いに知り合い
専ら職場の愚痴の相手をして貰うだけにも関わらず
いつでも、優しく笑いながら、滝澤の隣にいてくれた

今日はいつもより嫌なことが多く愚痴が長引く
つい口に出した。溜め息と、嫌になりますの言葉
彼女は俯いて何かを呟く。何だと訊いても笑うだけで

良いこと教えてあげる。そう含みを持たせ呟いた


「心に太陽を持って」

「貴方だけの、どんなものでも良い。眩しい太陽
そうすればきっと。何が来ても照らされる筈だから」


歌うように軽やかに、慈愛のような、悲哀のような
曖昧で美しい瞳を携えながらAはその言葉を言った

暫くは惚けてしまって、やっと正気に戻ってから
良い言葉っすね。そう言えば彼女は向日葵のように
幼く笑いながら、元々は詩の改変なんだけどねと言って
滝澤の頬に真白い手を添えて、聖女と見紛う笑みで続けた


「政道くんの周りはもっと素敵なことに溢れてる」


風で髪を揺らして滝澤を覗き込む。絵画のような
美しいAがそう言えば、本当にそんな気がして
勢いよく立ち上がって、にへらと、軽く笑ってみせた


自分の体を弄られ、化け物になってからも
心に太陽を持て。この言葉だけを頼りにしていた
酷く躍起になって、滝澤政道を保ち続けていたのだ
必死になって手繰り寄せて、縋って、地を這いながら

その言葉こそが、滝澤の記憶に残る彼女こそが
紛れも無く滝澤政道の中で輝く目映い太陽だった

壊れても知らないから。誰かがの声が聞こえた
それはもう、美しい、澄んだ声だったのだけれど
それがたまらなく不気味に感じ、滝澤は身震いした

拷問だろうか、殴る蹴るの稚拙なものならいいが
どうしてこうなったのだろう。何がいけなかった?
滝澤がぼんやりと考えていたら、足音が近付いてくる
その考えていたものの内の何れかだったなら、どれだけ

目の前に、いつか見た風景が再現された

揺れる、癖の無い艶やかな髪に縁取られながら
白魚のような手は滝澤の頬をするりて撫でてきて
覗き込んでくる顔は不気味な美しい笑顔に彩られていた


「……………ぁ…?」

「こんにちわ、元気かな政道くん
ねぇ、秘密の話でもしよう。二人きりで」




(とっくに塗り潰されてしまっていた)


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