【東京喰種】色んなアナタと【短編集】

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金木研は読書好きの平凡な大学生であった

幼い頃に他界した母の面影を持つ女性に恋をした
ただ不運にも、その女性は普通ではなかったのである

その女性に騙され、危うく命を落としかけた
助けられた医者に騙され弄られ、喰種となった
見知らぬ組織に拐われ、地獄のような日々を送った
それでも仲間がいたから、抜け出そうと作戦を立てた


「僕は普通じゃない。貴女は普通だ、人間だ
普通に生きてください。…貴女とはいられない」


失敗した。自分が残れば仲間を見逃すと言われ残った
結果今までの苦痛が天国のように感じる苦痛に襲われる

目頭から注射針で薬を流し込まれた。熱かった
ペンチで五指をねじ切られた。何度も何度も繰り返し
耳に巨大な百足を押し込まれた。嫌な音が耳から離れない

逃げた筈の仲間の母子、どちらを殺すか選べと
選べる訳が無い。まるで、自分が手を下すようだ
だから必死で抵抗した、殺すな、やるなら僕を、と
結局は、二人とも殺された。苦しみの中死んでいった

そんな極限状態で出逢ったのは金木を騙した彼女だった

彼女は弱い金木に強くなる術を教えてくれたのだ
大事ならば、どちらかを捨ててでも守らなければと
選ばないのは捨てるのが怖いだけだと。馬鹿みたいだと
それは優しさではなく弱さだと、そして強さを手に入れた

自分の居場所を脅かす組織を潰そうとしたが
自分の周囲に被害が及んでしまうことを恐れて
喰種になってから支え続けてくれた場所から離れ六区へ


「……金木さんだって、普通、でしょう…?」

「…僕は喰種だ。普通なんかじゃない、絶対に、違う」

「……それでも好きです、貴方なら、構わない」


そこで出逢ったのが東Aと言う普通の女性

愛していた。彼女の裏も表も何もかも全て
けれど金木は普通である愛しさを、平凡の尊さを
異常の傍にいれば普通が壊れてしまうことも何もかも
知ってしまっていたから。自分を押し殺すしかなかった


「…ごめん、なさい」


だから二十区に戻ると決めたとき、少し、安心した
六区から去るのだからAに会わなくても可笑しくない

そう考えたのに今、こんな状況になってしまっている

話を中断して逃げたら追いかけられるかもしれない
けれど。話を続けたらきっと、決心は揺らいでしまう
それなら僕が彼女に嫌われてしまえば良いんだと思って

彼女の柔らかい小さな身体を、自らの赫子で貫いた
溢れる赤が綺麗で。悲しくて。頭は溶けてしまいそうで



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