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遠久/【カネキ】 ページ24

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本屋で同じ本を取ろうとしたのが出逢いだった
今改めて考えると運命だったとしか思えないけど
最初、内向的な文学少女の私は驚いて肩を震わせて
白髪に眼帯、さらには黒い爪と来て、酷く怯えていた


「すいません、どうぞ」


けれど直ぐ様謝ってくれた上に届かない本を取り
笑顔で私に手渡してくれた彼に、異性との交流など
兄としてしか見ない幼馴染みだけだった私は恋に落ちた

お礼と称して近くのカフェに入って名前を聞いて
読書の話で盛り上がった私達はまた会う約束をして
週に三回余りのペースで頻繁に、何度も顔を合わせた

また今度。そう聴く度に想いは募っていって
大好きで、墓場に持っていくには余りに重たい


「元いた20区に、戻ろうと思います」


だからこそ、なのだろうか。只の引っ越しだと
分かっていた筈なのに胸が警報を鳴らし騒ぎ出した
今離れたら二度と会えなくなるような、そんな危ない音


「……嫌、です。行かないでください」


小さくそう言えば彼は曖昧に悲しげに微笑んで
子供に言い聞かせるように優しく、肴めるように
また遊びに来ますからと。堪らなく悲しい顔で言った

それを言うと一瞬目を見開いた彼は言葉を濁して
眉尻を下げて、凄いですねと言いながら小さく笑った
それは肯定ですか?と問うても、また苦笑いを返すだけ


「私が嫌いになりましたか?それとも最初から?
仲良くなれたって喜んだのは、私だけですか……?」


女々しい、彼は何も言ってないのに決めつけて被害妄想
女々しい事この上無いじゃないか、やっぱり私バカみたい

違います。声が響いて弾かれるように顔を上げる
彼は、更に続ける。Aさんといるのは楽しいし
仲良くなれた時は僕だって嬉しくて、喜びました、と
そこまで言って俯いて、それでも僕は。そう、漏らした

何故ですかと訊けば彼は目線を軽く彷徨かせて
ゆっくりと口を開く動作が、嫌に目に焼き付いた


「……その前に、どうしてそこまで?」


言葉に詰まった、貴方が好きだからなんて言えない
けどそんなことを言ってる場合じゃない。分かってる
震えるな、足。動け口。頑張れ私。大丈夫、出来る筈だ


「金木さんが、好きだからです」


言えた安心からかほぅと溜め息が出てしまう
何でも良い、返事が聞きたい。そろりと彼を見ると
私の前で愚痴も弱音もひとつでさえ言わなかった彼が
強い彼が、酷く震えて、薄い唇を噛み締めて泣いていた




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まっちゃ - ああああもっと速く見つけたかった!!タケさんもっと増やして欲しいです…!! (2019年6月7日 18時) (レス) id: 0fdc1c93f1 (このIDを非表示/違反報告)
糖分 - 平子さんホント好き…もっと増やしてくれてもいいんですよ(( (2019年1月4日 0時) (レス) id: e217bd5dbf (このIDを非表示/違反報告)
アホ毛50% - お二人様コメントありがとうございます!此方の作品は完結しておりますのでmix berryという作品にリクエスト頂けたら嬉しいです!! (2016年2月20日 7時) (レス) id: c7c039e431 (このIDを非表示/違反報告)
謳憂(うたう)(プロフ) - 金木くん(白)増やして欲しいです!! (2016年2月18日 13時) (レス) id: 67760cdd1a (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - 郡さんマジ綺麗増やしてくださいお願いします (2015年8月13日 16時) (レス) id: b9de54a5ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ウズメ&アホ毛50% | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2015年2月23日 18時

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