【東京喰種】色んなアナタと【短編集】

無知／【ノロ】 ページ23

,



ノロの事はよく知らない。知りたいとも思わない
喋らないし表情だって見えない。自分から動かない
タタラさんとエトちゃんに言われたこと以外やらない
だから、あぁ、そういうタイプかなんて納得してたのに

でもいつかの作戦で私が返り血塗れになって
顔に付いた温い血が酷く気持ち悪い。服も血塗れ
どうしようかと困ってたらノロが袖で拭いてくれた

本当に雑だったけど、誰にも何も言われてないノロが
私の為に自分の服を汚したという事実で私は満たされた


「ねぇ、胸がもやもやするの」


佇むノロの背中に寄り掛かって私がそう言っても
返事なんかしない。相槌も打たない。立っているだけ
まるで独り言を言っているように感じて、面白くなくて

不満を抱きながら話を進める、なんでかな、と

共食いは最近していない。人の食物も食べてない
どんな怪我をした訳でも無いのにたまに息苦しくなる
ノロを見ると体が思うように動かない。けれど目で追う

そんな不思議な体験をしてるの。そう言うと
ノロは何を思ったのか私に手を伸ばして手を握る
すると、掌からじわりと、熱が私の身体に広がって
この気持ちの名前が分かりそうになって、手を離した


「止めて。知りたくなんて無い」

「私達は、強くないの生きていけない種族なの
その為にアオギリに入って、殺して暴れて強くなった」


きっと、知ってしまったら私は死んでしまう
死んでしまうのはとても怖いから、知りたくない

酷く背が高くて、節立った掌をした貴方の素顔も
与えられれば大喰らいの癖に食事を取らない貴方も
何も言わないけれど伝えようとしてくれている言葉も
貴方が、私が本当に困っていると助けてくれる理由も

何もかも、知らないけれど。決して知りたくない
どんなことを感じても思っても考えても、蓋をした

そうしたら怖くないもの。例えば貴方が死んでも
知らない誰かが死んだなら悲しくなんてならないし
私が死ぬときも知らない誰かを想い描いたりしないし

まるで壁などの無機物のように全く動かないノロは
私のゆっくりとした呼吸のリズムでさえも消すようで
ノロの心音も聴こえない。私の耳に響くのは、私の、音
きちんと生きているのか不安になるのが可笑しくて笑った



(時計を揺らす秒針、横たわる病身)


,

遠久／【カネキ】→←叫声／【佐々木琲世】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す