【東京喰種】色んなアナタと【短編集】

昔馴／【伊東倉元】 ページ21

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私と奴は俗に言う幼馴染みという奴だろう
近所住まいで幼稚園で友達になり、小中高大
職場、更に所属班。本当に、怖い程ずっと一緒

ぼんやり考えながら自販機のボタンを押した
倉元の分。二十年の付き合いだ、好みくらい分かる
お互いの知ってることを挙げ出したら、切りが無いし
お互いの家に泊まったことだって覚えて無いくらい有る


「倉元。まだ終わんないのかよ、遅い」

「ごめんごめ、って、飲み物買ってきてくれたんだ」


目敏くペットボトルに気付かれて舌を打つ
こいつの無駄なときに無駄に働く観察眼何なんだ

苛付きから力任せにペットボトルをブン投げるが
普通、と言うより背を向けたまま軽く受け取られて
途中で寝たら帰り遅くなるだろうが、金回収すっから
そう言って、利子500円だからな糸目、と、付け足した


「うへぇ……先帰ればいいのに」


返す皮肉らしい言葉が見当たらず、黙りこくる
餓鬼の頃は何でもかんでも私に負けて号泣してた癖に
中学の辺りから突然、掴み所が無くなって。腹立たしい

頭を掻きながら、寝る、仕事終わったら起こせ
適当に言えばおやすみと返ってきて、目を閉じた



お前ら付き合ってないのか。そう、言われたのは
確か、平子班入りたての私と倉元の距離が近すぎて
平子さんが私達が恋人だって、勘違いしたときだった

私が笑いながら、ただの腐れ縁ですって返したのに
あの倉元が珍しく笑顔崩して、不満顔だったんだよな


「起きてA、終わったよ」


聞き慣れた声で目覚めて立ち上がろうとすると
足裏から響く独特の痛み。これは間違い無く痺れてる
足に力が入らなくて、仕方無く痛み覚悟で目を瞑ると
あんまり、どころか痛みが来なくて恐る恐る目を開けた

顔の真横に薄黄色の所々跳ねた癖っ毛が見えて
倉元が私の下敷きになってるんだなって気付いた


「いってぇ……A、大丈夫?」


そう、覗き込んでくる顔がいやに格好良くて
幼馴染みを意識する自分が、酷く恥ずかしくて
熱が集まる、赤いであろう顔を見られたくなくて


「か、格好つけてんじゃねぇよバーカ!!」


そう叫びながら倉元の体を思いきり押し退けて
近くの荷物を乱暴に掴んで外まで本気で駆け抜ける
冷たい夜風に当たっても全く引く気配すら無い顔の熱

しゃがみこんで、ため息を漏らして、頭を抱える

だって、幼馴染みだし。恋愛対象とか有り得ないし
明日からどんな顔して話せば良いのか、分からないし



(暦の赤文字 私の鼻唄)


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