【東京喰種】色んなアナタと【短編集】

男女／【宇井郡】 ページ17

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開いた扉にいらっしゃいませ、そう声を投げれば
結構な人数の男性の中から、席大丈夫ですか?の声

前に出てきた声の主は物凄い美人で、固まった

柔らかい印象を持たせるような大きな黒い目に
少しの動作で揺れる切り揃えられた滑らかな髪と
堅苦しいスーツ越しの、細すぎない綺麗で華奢な体
動作一つ一つきちんとしていて、優雅で、うっとりする

此方のお席になりますなんて事務的に言いながら
頭は有り難う御座いますと笑う彼女で埋め尽くされる

絶対顔赤い、恥ずかしい。相手は同じ女なんだから
もしかして私ソッチの気有ったのかな。いや違うって
煩悩を振り払おうとおしぼりを渡しながら会話を始めた


「職場の方ですか？」

「えぇ、酔っ払いの回収係はいつも私で」

「お酒お強い方なんですか?あの白髪の方も?」

「あれは顔に出ないだけで、私は飲まないんです
あの人、耳真っ赤でしょう、って…うわ、呑み過ぎ…」


声は少し低い、素敵。そんな馬鹿っぽい感じで
談笑してると名前聞いちゃおうかな。なんて欲望が
可笑しい、不味い。分かっていながら口が勝手に動いて

お名前聞いても良いですか?と私が言えば
不思議そうにえっ?と呟いて、いや、それはと
まぁ、だよね。なんて静かに脳内で落ち込んでたら
例の白髪眼鏡さんが寄ってきた。この人も綺麗な顔で


「美人と盛り上がってるねコオリ
名前くらい教えてあげなよ、それとも俺が言おうか？」

「あっ、有馬さん!茶化さないでください!!」

「こおり、さん?」

「あ、はい…宇井郡って言います」


ういこおり。凄く、綺麗で、頭の中で繰り返す

気持ち悪いなぁ私。自分の異常性に引いていたら
ういさんが、皆さん酔い過ぎです!帰りますよ!と
怒り気味の声で言ったから、お帰りですか?と呟いた

もう少しだけ喋ってたかったな、なんて
少し俯いていたら、アリマさんが寄ってきて


「また郡を連れてくるよ店員さん
流石に仕事ばっかりじゃ可哀想だしね」


まるで耳打ちするような体勢でそう言われた

恥ずかしさと少しの感謝。酷く幸せな気分で
色んなものが混ざってぐちゃぐちゃだったけど
口を開いて何時ものマニュアル通りの言葉を言った


「またお越しください」



(木目を数えて、夜が明けた)


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