傷を抱えた私達は (ページ46)

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私は恐る恐る草川くんに聞いてみる

『草川くん。ひとつ聞きたいことが…』

「ん？なーに？」

『精神が不安定になると寝れないことは柊生から聞いてたんだけどさ、』

「うん」

『あの日保健室で寝ていたのは何が理由で？』

「あの日…？」

その反応でまだ草川くんが私との初対面を思い出してないことがわかった

え、やっぱり覚えてないのかな…

少しの沈黙が流れたあと

「もしかしてなんだけど、俺ら保健室で会ったことある？」

疑問形だけれども少し思い出してくれたみたい

『会ったというか、抱き枕になったというか…』

数秒固まった草川くんはその後ガバッと頭を下げてきた。そんな謝る！？

「ごめん。本当にごめん…いきなり知らない人に抱き枕にされるなんて嫌だったよな、、」

『うーん、嫌だったら私はここにいないかも？』

びっくりはしたけれど嫌ではなかったんだあの時

『で、話を戻すけどなんで寝てたの？』

やめて、捨てないで。の言葉の意味は怖くて聞けないから寝ていた理由を聞く

「笑わないで聞いてよ？」

『うん』

笑うようなことなのか？

「抱き枕…」

『抱き枕？』

「抱き枕にしてたぬいぐるみ捨てられて寝られなくなって寝不足になってた」

うっ…か、可愛い

そっか。ぬいぐるみか

ぬいぐるみを抱きしめて寝ていたのか

『彼女さんに捨てられたのかと思ってたよ』

「俺そもそもAちゃんが初カノだし」

『ええっ！？』

そんなモテそうなのに？

「そんな驚く？」

高嶺の花だったんかな

1ヶ月間会っていなかったのが嘘かのようにずっと草川くんの隣で笑っていられる

その現実が幸せで仕方がなくて泣きそうになった

心の傷は完全に癒えることはない

必ずどこかでまた過去を思い出して辛くなることもあるだろうし、泣くこともあるかもしれない

でも、傷を負っている自分を受けいれ前を向くことは出来る

少し自分を許して、自分を少し好きになろう

傷を抱えて一人で生きるのは辛いけれど

傷を抱えた私達ならこれからもお互いを支え合って生きていけると思う

あの日、保健室で草川くんの抱き枕になれて本当に良かった

end.