傷を抱えた私達は (ページ36)

今日:4 hit、昨日:9 hit、合計:20,542 hit

・ページ36

もうバスケに関して私を縛り付けるものはない

たぶんだけど他のスポーツをしてももう問題ないだろう

『ありがとうございました』

精一杯心を込めて挨拶をする

現役時代からほとんど動いていなかったため、ボロボロだったが心は満たされていた

やっと美香という呪縛から開放された私はスキップでもしそうなほどるんるんでコートを出ようと1歩踏み出した途端崩れ落ちた

そりゃそうだ。3年間運動をほとんどしてこなかった私がいきなり6分間も試合をしたらこうなるよな

自分の心と向き合っていたくせに、自分の体調の変化には全くというほど気づかなかった

また、冷たい床に叩きつけられるのか

あれ、地味に痛いんだよな…

なんて朦朧とする意識の中思っていたが、私の体は床には倒れなかった

ピンぼけするからちゃんとは捉えられていないけどたぶん私を受け止めてくれたのは

草川くんであってるよね…？

草川くんなら安心して私を任せられる

ふわっと抱えてくれて、早足で体育館を出る

あぁ、そういえばあの時も草川くんと体育館を一緒に出たな

あの時は自分がこんなにも前に進むことが出来るなんて思ってもみなかった

過去に囚われて前に進めなかった臆病者の私を変えてくれたのは確実に草川くんで

なんか、助けてもらってばっかりだな

保健室に着くと松尾先生と草川くんがテキパキと動いてくれ、段々と楽になってくる

体温まで測ってもらって本当に申し訳ないよ…

『ごめんね、草川くん…』

と謝ると一瞬嫌そうな顔をされる

ありがとうの方が良かったかもな、、

「謝らないで。でも、無理は良くないんじゃないの？」

少し怒ったような声で、でも優しく諭されるから

『ごめんなさい…』

また謝ってしまった

草川くんはもう何も言わず優しく頭を撫でてくれる

それがすごく気持ちよくてずっとしててほしいななんて思った

しかし、体温計の鳴る音で草川くんの手は離れていってしまう