傷を抱えた私達は (ページ18)

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人見知りで口数が決して多くなかった拓弥は人間関係が今よりも狭かった

でも、人を引きつけるオーラを放っているから一目おかれる存在だったんだ

仲良くなれば面白いやつなんだけどさ、関わったことのないやつには誤解されることも多かった

そんな拓弥のトラウマになる出来事が起こったのはまだ俺が拓弥の中学に転校してくる少し前のこと

拓弥と一緒にいた、まぁ、Aくんとするけど
Aくんには好きな人がいた

その好きな人が拓弥のことが好きだったんだ
まぁ、よくある話だし拓弥かっこいいからな

この先は漫画でもおなじみの展開でAくんは、拓弥のせいで俺の恋が叶わないと難癖つけて拓弥から離れた

拓弥何も悪くないのにな

問題はAくんがクラスのムードメーカーの立ち位置にいたから拓弥がクラスで孤立してしまったことなんだ

[ここまで着いてこれてるか？]

1度柊生はこちらを振り返り尋ねる

『うん、大丈夫。続けて』

私は柊生が話す草川くんの過去に入り込んでいた

柊生の言葉が私の頭の中で映像として流れてくる

私がこの場面を撮ってるカメラマンでどんどんと草川くん中心に物語が進んでいくような感じ
でも、これは草川くんの紛れもない過去で彼を苦しめているものなのだろう

[それで、トラウマになってる出来事は…]

なにも特別なかった昼休みに起こったんだ

孤立していると言ってもいじめられているわけじゃないからあんまり気にしてなかったらしいんだけど

することもないから昼休みに教室で寝ていて起きたら教室に誰もいなかったんだって

次の授業が移動教室だからみんないなかっただけなんだけど、誰も起こしてくれないんだって俺は本当に1人なんだって思ったらしい

それから拓弥は起きたら1人の世界になってたらどうしようなんて考えてしまい、精神が不安定になると長い間寝れなくなってしまったんだ

[Aの過去と比べたらそれだけのことかよって思うかもしれないけど…]

『ううん、そんなこと思わないよ。これが草川くんの心の傷なんだね』