先輩。 ページ5
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『てーつやくんっ』
「起きろー!」
シュークリームを腹いっぱい食べる夢を見ていたら、高い声とデカい低い声が響く。
突然頭に激痛が走り、顔に霧状の液体がかかる。顔から謎の爽やかな匂いがしてきた瞬間、あ、やられたと寝ぼける頭が働いた。
「っ、もお〜……」
恐るおそる目を開けば、動画を撮りながら消臭スプレーらしき霧吹きを持つ亮と、ハリセンを持ってニコニコするマツコ先輩がいた。
『ほらほら徹也くん、起きてください!!』
「嫌だあ……」
せっかくシュークリーム食ってたんだげえ、もうちょっと夢見させてくれんものか……
『起きて!!!』
でも現実は厳しい。バシッ、と顔に紙の塊が命中する。
「お前くせえんだよ!!」
叫び声とともに亮には水をぶっかけられた。このドSな幼馴染カップルに幾度も睡眠を妨害されてきたけど、今回もまた強力な横やりにやられて起きざるを得ない。
『徹也くんがちゃんと起きて、お風呂入って歯を磨いてくれたら軽食作って出したいなあ』
「分かったよお……」
『はい、じゃあ起きようね』
マツコ先輩はおはよう、と腕を引っ張った。先輩と亮の言うことなら仕方ない。もう寝れないと諦念した俺は嫌々ながら重い体で立ち上がった。
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ひとっ風呂浴びて1ヶ月ぶりに歯も磨いてリビングに戻ってきてみれば、テーブルの上には綺麗に整った三角のおにぎりが2つ並んでいる。
『おっ、ちょっとイケメンになっとるー』
「……まじですか?」
『嘘』
「酷いじゃないですか!」
作った本人は亮に後ろからホールドされてゲラゲラ笑っとる。マツコさん……Aさんは昔っからSっ気のある女だった。陸上部の長距離がきっかけで出会った。
Aさんはマネージャーで部員の間ではめっちゃ可愛いし優しいのに、愛らしいニコニコ笑顔で鬼畜なトレーニングを課してくると有名だった。
あと1周で終わると思ったら3周追加なんてザラ、筋トレの追い打ちもキツすぎた。顧問の指示を仰いでたんだけど、Aさんの笑顔に部員達は慰められつつも脅威も感じていた。
俺だけじゃなくて亮も夢丸も幾度となく苦しめられてきた。
『とりあえず鮭としそ昆布にしといたよ!』
「ありがとうございます!」
手前のおにぎりを口に入れる。先輩の作った鮭おにぎりはめちゃくちゃ美味かった。
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あおやなぎ(プロフ) - AYN98036518さん» 初めまして、ありがとうございます! これからもこの作品をよろしくお願いします(^^) (2021年1月5日 15時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
AYN98036518(プロフ) - 面白いです!面白すぎます!頑張って下さい!続き楽しみに待ってます!!!!!!! (2021年1月4日 12時) (レス) id: 12406a430a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年5月14日 22時