東海の凸凹

♯ ページ25

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「ちょっとしんどいなあ……、食べるけどさあ……」


落ち込んだりょうくんは背中を小さくしています。大して2人は見せつけるように寿司を食べています。



「この穴子うめえ！！！」


「おいてつや！ お前大トロ入り頼んだんか！」


「おう！ 美味いだろ！」


「うざいなあ……」


はあ、とため息をつき、りょうくんはいただきます、と手を合わせる。そういう所も食べようとするのも律儀です。僕の実母や彼女が日の丸弁当を作っていたらぶちギレて残していると思います。

1口分を箸にとった時。中から黄色い何かができました。



「あれ？ 卵入ってる！」


「卵？」


まさか、とりょうくんが少しお米を掘り起こす。卵だけではありません。緑のチンゲン菜らしき葉物に紅色の鮭、そして茶色は鶏そぼろと鶏の照り焼きでしょうか。



「これただの日の丸弁当じゃない！ 中に具がある！」


下に海苔とご飯もある、と花が開くようにパアっ、とりょうくんの笑顔が戻ってきました。



「騙されちゃった。今日はAのイタズラ弁当の日だった」


うめえ。気持ちがこもったその一言が再び出前寿司を霞ませます。

どうやらAは不定期でイタズラ弁当なるものを作ってくるんだとか。



「弁当開けたらバカ可愛い動物とかキャラクターがいるんだよ？ 職場の人に弄られるもん」


そう言って見せてくる写真には続々と愛らしいキャラ弁が写る。とても朝作ったとは思えない精巧な作りに思わず感心します。



「あとこれやばくない？」


スクロールされた写真には“キャラ弁止めないよー”、と人と文字が描かれたご飯が写っていました。



「俺がキャラ弁やめてって怒ったらキャラ弁でやり返された……」


「マツコさんすげえ！」


でもどの写真も美味しそうです。彩りを考えて作られています。このお弁当を作るために買い物をする。早く起きる。愛情がなければできません。



「おかずが隠れてるパターンは初めてだったな……。油断してた」


ただAはおっちょこちょいですね。イタズラに手をかけて、弁当がいらない日に張り切るなんて。でも東海オンエアとしてはネタになったし、これからりょうくんの彼女としてAには動画に関わってもらえる。

美味しそうにお弁当を平らげるのを見ながら、交際5年目も安定にラブラブな2人に微笑ましさを覚えるのでした。

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