検索窓
今日:23 hit、昨日:30 hit、合計:190,065 hit

ページ19

.


その日はオープンキャンパスが終わり、学科紹介お疲れ様の飲み会が入っていた。

来週はサークルメンバーとスパーランドのプールに行く予定がある。明日はゆっくり眠って水着を見に行こうかなあ。楽しみが多いって素晴らしい。

熱帯夜の23時、アパートの階段を上って通路へ入る。



『えっ……』


そこで足が止まった。自分の部屋の前で男が座り込み、うたた寝をしている。



『誰……?』


聞こえないように呟いたはずが聞こえていたらしい。彼は起きて顔を上げる。見覚えのある顔に私は背を向けて走って階段を下りた。



「待って!」


でも現役高校生と大学生、男と女とではどちらも前者の方が強い。すぐに追いつかれて腕を掴まれた。



「逃げんな!」


『逃げとらん!』


「じゃあ何で……」


久しぶりにまともに顔を見る。ハッとした。どんなことがあっても笑顔を絶やさない彼……亮が、怒ったりしない亮が……、泣き出しそうな顔をしている。

顔に力を入れて涙が溢れないように耐えている。



「何で、俺のこと、避けてるの……?」


声が震える。腕を掴む手の力が強くなる。20年近く一緒にいるのに、そんな顔で動揺するのは初めてだった。



『……ごめん、部屋で話そう』


ここで話しても長くなる。夜は遅く近所の方々の邪魔にもなる。頷いて手を離してくれたからおいで、
と少し距離を取って部屋へ向かった。

会話のない2人きりの数秒間はやけに静かで、場違いにカラスの鳴き声が響いて聞こえた。


.



何を考えているのか分からない。女々しいけど、Aはどうして俺と付き合ってくれたのか。この数ヶ月、自問自答し続けたけど答えは出なかった。

告白した日、あの時の照れた顔は演技だった? 本当は好きでもなんでもなかった?

電話をかけてもメールを送っても、出てくれないし返信がない。何度も拒否された。最後の大会は手紙1枚で済まされてしまった。挙句の果てには……、自然消滅したなんて言い出す。

増田に慰められた時、頭の中が真っ白になった。着信は拒否され、連絡を取ることさえ許されない。俺は別れたつもりなんてない。自然消滅だなんて考えたこともなかった。

Aの中で俺は終わった存在だった……?



『はい、お茶』


透明なグラスの中で氷がカラン、と音を立てる。数ヶ月ぶりのAはやけに大人びて見えた。

♯→←♯



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (110 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
557人がお気に入り
設定タグ:東海オンエア , りょう   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あおやなぎ(プロフ) - AYN98036518さん» 初めまして、ありがとうございます! これからもこの作品をよろしくお願いします(^^) (2021年1月5日 15時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
AYN98036518(プロフ) - 面白いです!面白すぎます!頑張って下さい!続き楽しみに待ってます!!!!!!! (2021年1月4日 12時) (レス) id: 12406a430a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年5月14日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。