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それからもただひたすらに亮を拒んだ。6月11日の誕生日に初めておめでとう、を言わなかった。
遼太には亮が待ってるから一言かけてほしい、と電話を貰ったし、誕生日パーティーのサプライズゲストになってほしい、と頼まれた。でも全て断った。
何年も続いた大切な人への祝福が途切れた。辛いけど、これでいい。
でも流石に様子がおかしいと気付いたらしい。体育祭が終わった頃から遼太から別れたのかと連絡が来るようになった。
『……まあ、自然消滅ってやつかな』
「マジかよ……、マツコと亮、結構お似合いだったのになあ」
『仕方ないよ、高校と大学は生活リズムが違うし。亮にはもっとお似合いの子がいると思うし、私も新しい恋を探すいい機会だから前向きに捉えてるよ!』
遼太は納得のいかないようにふーん、と相槌を打つ。
「それ本心?」
『めちゃくちゃ本心!』
「サバサバしとる。童顔なのに……」
『関係ないじゃん!!』
本当は嫌だ。亮が他の誰かを好きになるなんて考えたくもない。あんなことやこんなことを他の女の子とするのを想像すると心が抉られる。
でも私は年上だし、亮の将来を考えたら身を引かなくちゃならない。好きでも離れなくちゃいけない。
幸せになってほしいから……、そろそろ幼馴染離れしないといけないと思う。
スマホから着信音が鳴る。電話の主は噂の人物だ。
「出らんでいいの?」
『うん、大丈夫』
お願いだからかまわないで……
私よりいい人を見つけてよ……
聞こえないふり、見ないふりは本格的に暑くなっても続いた。着信不在、メールは溜まったまま放置されていく。
『またか……』
この着信に反応したら楽になれるけど離れられなくなる。私達は消滅した。自分に何度も言い聞かせ最後は着信拒否した。
出会いと気を紛らわすために合コンに行ったし、バイトを無理のない範囲で入れた。友達とも約束を入れた。サークルの練習も詰まっている。予定をこなせば亮を考えずに済んだ。
『……片付けよう』
ブレスレットはクローゼットの奥に仕舞った。今捨てられないのは私の弱さ。ほとぼりが冷めたら、次のゴミ収集日に捨てよう。でも捨てられなかった。
気づけば定期試験、オープンキャンパスが終わった。8月上旬になって立秋も近くなり、やっと大学生初めての夏が幕を開けようとしていた。
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あおやなぎ(プロフ) - AYN98036518さん» 初めまして、ありがとうございます! これからもこの作品をよろしくお願いします(^^) (2021年1月5日 15時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
AYN98036518(プロフ) - 面白いです!面白すぎます!頑張って下さい!続き楽しみに待ってます!!!!!!! (2021年1月4日 12時) (レス) id: 12406a430a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年5月14日 22時