強がり。 ページ41
in 2019
俺は酒に弱い。ビールジョッキ2杯までは余裕だけど、3杯目からは酔いが回り始めて顔が赤くなる。6杯を超えようものなら吐いてしまい、しばらくトイレから出られない。
楽しく飲みたいならソフトドリンクを挟んだり飲む酒の数を減らしたり、アルコール度数の低い物を選んだりしなければ無理だ。
「俺も飲みたいなあ……」
アルコール耐性は低いが酒は好き。自分にとってこれほどにも辛いことはない。
『ダメだよ、亮が飲んだら私も運転できん』
でも目の前の女は俺よりも遥かに小さいくせに、なぜか酒に強い。
度数が高いお酒を5杯以上飲んでもケロッとしている。ビール1杯はお茶みたいなもんだ。
「俺を足にする気満々じゃん」
『足になるって言ったのは亮やん』
強すぎて分けてほしいもんだ。
東京での撮影が終わり、久しぶりに岡崎へ帰ってきた。今まで何度もやって来た飲み屋巡りのデートも久しぶりだ。
『どうだった? 東京での撮影は』
「忙しかったけど楽しかったよ」
一生岡崎で生きていく、と決めていた自分が、1ヶ月とはいえ一時的に仕事と生活拠点を東京に移す。そんな機会があるとは思わなかった。
「すげえ本格的な撮影だったしね。ドラマってこんな風に作られとるんだなって学びになった」
実際に活躍する俳優さん達とも共演できて、一生に1度の思い出になった。
目の前の唐揚げを掴む。程よいにんにく醤油味を口にすると、やっぱりビールが恋しい。レモンサワーでいいから1杯だけ飲みたくなる。
『そっかあ……』
今日はAのペースが早い。既に5杯目を飲み終えている。
『コークハイ飲もうかなあ……』
「そんなに飲むと明日後悔するよ?」
『私、酔わないもーん……』
そして珍しく酔いが回っている。やたら度数の高い酒を飲んでいるような気がする。
トロンとした目に若干眠気を帯びた弱い声。酔っ払った姿を見るのはAの成人式後以来かもしれない。
『あー、タバコ吸いたい……』
「ダメだよ。せっかくやめたのにまた吸ったら」
『いいじゃ〜ん……、1本ならさあ……』
Aは千鳥足でフラフラと俺の席に歩く。膝の上に向き合って座って、やたら下半身と胸を擦り付けてくる。
店でそんな破廉恥を晒さないでほしいんだけど。公共の場では醜態だし、俺が正気を保てなくなってしまうから。
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あおやなぎ(プロフ) - AYN98036518さん» 初めまして、ありがとうございます! これからもこの作品をよろしくお願いします(^^) (2021年1月5日 15時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
AYN98036518(プロフ) - 面白いです!面白すぎます!頑張って下さい!続き楽しみに待ってます!!!!!!! (2021年1月4日 12時) (レス) id: 12406a430a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年5月14日 22時