♯ ページ12
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『福尾は知らなかったし傷ついとるよ。亮の悪口言うんだったら皆近藤さんと同じだら』
何人かの先輩達がギクリ、と肩を震わせた。
『これ以上この件で誰かが悲しい思いするの、許さんからね』
Aは強い。本当は悲しくて俺よりもしんどかったはずなのに。自分の情けなさを痛感したけど、Aには敵わない。
「A、ごめんね」
ミーティングが終わった後、Aを呼び止めた。
『やっとAって呼んでくれた』
2人でプライベートな話をするのは久々で緊張していたのに、Aは全く関係のない話題で気を逸らす。
『寂しかったんだよ? 亮にマツコさん呼びされるん』
「ごめん……」
『マツコは大切なあだ名だけど、亮のAはもっと大切だげ』
マツコさん禁止、と明るく言ったAは嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。
甘えてくれる女の子が好き。でも俺は頼もしすぎるほどに頼もしいAが好きだ。今度こそ逃げない。Aから、自分の気持ちから。
「分かった」
『もしマツコさん呼びしたら外周5周追加ね?』
「鬼すぎん?」
『鬼じゃない。鬼呼びでプラス3周です!』
「じゃあA様で1本減らして?」
『ちゃっかり減らしてもらおうとしんで!』
その日から俺とAは1年前のように戯れるようになったし、一緒に帰ったり勉強を教えてもらうようになった。無事に特進クラスになれた俺はAから勉強面で色んな情報を得た。
『私お母さんと一緒でね、助産師になりたいの』
「うん」
『県外の大学行くこと考えたけどね、名古屋志望にした』
「え、国立の?」
『うん』
大学進学で愛知から出ていくかもしれない。でも俺の心配はあっさりと拭われた。少し遠くなるけど愛知にいてくれるなら会いに行ける。
“俺が大会で優勝し、Aが合格したら告白する”
Aへの想いが日に日に増していく。遠距離でも告白しようと思ったけど、愛知県内ならなおさら告白して付き合いたい。Aの彼氏になるのは俺がいい。
「……っ、はあ、はあ……」
「最近の亮、バカ頑張るやん」
「目標が、あるから……」
『無理して壊れんようにね』
徹也にもAにも心配された。でも俺は前しか向いていなかった。Aの引退後、俺は大会で優勝した。
Aも無事に名古屋の看護学科に合格した。
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あおやなぎ(プロフ) - AYN98036518さん» 初めまして、ありがとうございます! これからもこの作品をよろしくお願いします(^^) (2021年1月5日 15時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
AYN98036518(プロフ) - 面白いです!面白すぎます!頑張って下さい!続き楽しみに待ってます!!!!!!! (2021年1月4日 12時) (レス) id: 12406a430a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年5月14日 22時