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magic 36  赤間side ページ8

「栞音先輩に対抗戦を申し込みました」




そう告げると途端に見開かれた九頭竜先輩の瞳。





ぽかん、としていたその表情が、見る見るうちに怒りへと変わっていく。







「どういうつもりだ」





そう言って俺をにらみつける姿に、自然と恐怖は感じなかった。




それは、その怒りの中に“不安”や、“苦しみ”や、“懇願”を感じ取ってしまったから。







「あいつがっ・・・・・Aが能力をうまく使いこなせなくなったことは、

 
 お前だって知ってんだろっ!?






 ・・・・・・・・・・お願いだから、もうあいつを傷つけないでくれ・・・・」









俺のパーカーの裾をつかみ、震える彼の背中を見ていると、


これから自分の発しようとしている言動に途方もない罪悪感をおぼえてしまう。






・・・・・・・・でも、それでも、やるしかないんだ。









「・・・・・・へえ?その能力が使えなくなったきっかけはなんでしたっけ?」




もうピクリとも動かなくなった彼の背中に、追い打ちのようにたたみかける。







「栞音先輩が長かった髪を切ったのは何でですか?



 栞音先輩が美術部を退部したのは何でですか?



 

 栞音先輩が・・・・・・・・笑顔を見せなくなったのは、何でですか?」








・・・・・・知ってる。



本当は全部、知ってる。






あのころの2人の関係を、いつも隣で見守っていたのは俺“たち”だったから。




いつも目の前のこの人に、栞音先輩の“特別”でいられるこの人に、


醜い感情を抱いてきたんだから。








「もう・・・・・やめてくれ・・・・・・」




そう言って瞳から透明な雫を零すその人を、冷ややかな瞳で見つめる。









もしかしたら、今俺のしている行動も、本当は全部自分のためなのかもしれない。



不意にそんなことを思った。






あの頃飲み込んでしまっていた汚い感情を、蓋をしてしまっていた感情を、


何年もたった今、こうしてぶつけてしまっている。







もしかしたら、栞音先輩に過去を清算してほしいと思ったのも、もしかしたらーーーーーーーー




ーーーーーーなんて、そんな訳ない・・・・・よな?









胸の奥に芽生えた小さな痛みに気づかないふりをして、


いまだうずくまったままの九頭竜先輩に告げる。








「日時は今日の放課後、場所は練習ルームです。−−−−−−待って、ますから」






そう言い残し、そのまま彼の横を通り過ぎた。

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友っち - 初めてのコメントです。最近読み始めたので、失礼かもしれないですが、どんなに遅くても、作品を読み切りたいです。頑張ってくださいね! (2015年11月30日 16時) (レス) id: be4f9f14c9 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗 - 初めてのコメント失礼します。私はこの作品を読みきりたいです。応援しています (2015年9月7日 22時) (レス) id: 1b9eafbb53 (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - 沢山のコメントがいただけて、驚く半面本当に嬉しいです。最近ようやく時間が作れるようになってきましたが、まだ小説を書けるほどの余裕はなくて…。もう少し、時間をください。すみません。 (2015年8月13日 18時) (レス) id: fb8f65ae95 (このIDを非表示/違反報告)
のえる@遙 - お久しぶりです(笑)スマートフォンからのコメントになってしまいましたが…。私としては鎖奈さんの手で終わらせてほしいと思ってます。高校が大変なのは十分分かっているのですが、お願いします!受験合格いたしました(笑) (2015年8月11日 14時) (レス) id: 2c50856b56 (このIDを非表示/違反報告)
月片 - 私は、いいとかわるいとかの基準がわからないけど私にとってはとてもよい作品なので最後まで読みたいです (2015年7月16日 22時) (レス) id: f00d58d32a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鎖奈 | 作成日時:2014年4月13日 12時

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