recollection 09 ページ25
「・・・・・え?」
思考回路が停止する。
白いクマのキーチェーンが端末の隣でゆらゆら揺れる。
私は知っている。
栞音ちゃんの能力名は、まぎれもなく「シャッターイミテーション」だ。
最強であり、最凶でもある、栞音ちゃんの望まざる力。
だけど、
“能力名・カッティングメモリー”
そんな言葉が浮かんでいる端末は、間違いなく彼女のもので。
「・・えええ」
混乱している私に、遊兎が説明を重ねていく。
はじまりは、つい1時間ほど前だったらしい。
栞音ちゃんが九頭竜君の黒い万年筆を使って写真の隅に日付を記入していた時、様子がおかしくなったとか。
呼吸が荒くなって、手が震えて。
気づいたら写真に万年筆の先をつきつけて、切り裂いていたらしい。
そうしたら、その瞬間・・・・
“・・・チューリップを撮った写真だったんだけどさ、それがいきなり写真から出てきて、実体化したんだよね”
動揺で声が出せずにいる栞音ちゃんの代わりに、遊兎がつらつらと経緯を語り終えた。
・・・ありえない、話だけど。
でも信じるしかないんだと思った。
「シャッターイミテーション」と「カッティングメモリー」。
栞音ちゃんには、二つの異なる能力が存在している。
基本的にミカグラ学園で、生徒が持つことができるのは一つの能力のみ。
二つ以上の能力を持つ生徒もまれに存在するんだけど、それはもとの能力の進化バージョン、みたいな感じ。
つまり能力を複数持つことはあっても、それはあくまでよく似た能力だったの。
・・・だけど栞音ちゃんは違う。
相手の能力を模倣して自分のものにする「シャッターイミテーション」と、
写真に撮った「思い出」を実体化させる「カッティングメモリー」。
二つの能力は全く異なっていた。
でも共通していることがあるとすれば、それは、
「・・・・・すご」
強大すぎる威力を持っている、というところだった。
きっと、栞音Aという少女は、選ばれた人間だったんだろう。
彼女は二つの能力を、すぐに自在に操れるようになった。
私たちは栞音ちゃんをすごいとたたえた。
・・・まさかそれが彼女にとっての苦痛になっているなんて、思いもしなかった。
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友っち - 初めてのコメントです。最近読み始めたので、失礼かもしれないですが、どんなに遅くても、作品を読み切りたいです。頑張ってくださいね! (2015年11月30日 16時) (レス) id: be4f9f14c9 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗 - 初めてのコメント失礼します。私はこの作品を読みきりたいです。応援しています (2015年9月7日 22時) (レス) id: 1b9eafbb53 (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - 沢山のコメントがいただけて、驚く半面本当に嬉しいです。最近ようやく時間が作れるようになってきましたが、まだ小説を書けるほどの余裕はなくて…。もう少し、時間をください。すみません。 (2015年8月13日 18時) (レス) id: fb8f65ae95 (このIDを非表示/違反報告)
のえる@遙 - お久しぶりです(笑)スマートフォンからのコメントになってしまいましたが…。私としては鎖奈さんの手で終わらせてほしいと思ってます。高校が大変なのは十分分かっているのですが、お願いします!受験合格いたしました(笑) (2015年8月11日 14時) (レス) id: 2c50856b56 (このIDを非表示/違反報告)
月片 - 私は、いいとかわるいとかの基準がわからないけど私にとってはとてもよい作品なので最後まで読みたいです (2015年7月16日 22時) (レス) id: f00d58d32a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鎖奈 | 作成日時:2014年4月13日 12時