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recollection 08 ページ24

それはあまりにも、緩やかな変化だった。





歯車が軋んで、先端がかみ合わないようになっていって。



それらが重なった時、音を奏でることができなくなる。









・・・もとからね、九頭竜君は絵を描くことが上手だったの。




彼のお母さんは名の知れた画家でね、小さいころから絵を教わってたとか。









私はね、栞音ちゃんの撮る写真が好きだった。



アスヒ君も見たことあるかなぁ?





栞音ちゃんの撮る写真はごく普通のありふれた風景だったりするんだけど、でもあったかい。








にゃみりんはね、同じくらい九頭竜君の絵も好きだったの。





彼の描く絵は大胆で、でもどこか物悲しくて。



うまく言えないんだけど、見るたびに胸が締め付けられる。





私はそれが嫌いじゃなかった。









・・・話を戻すね。





アスヒ君は知ってるよね。





栞音ちゃんは、対抗戦が嫌いでたまらないってこと。



それはまあ、彼女が持つ驚異的な能力のせいで、忌み嫌われたこととかにあるんだけど。









でもね、九頭竜君と出会って彼女は変わったの。





毎日を楽しいって思って過ごすようになった。



能力を使うのもあまり拒まなくなった。







・・・きっと、その“楽しい”気持ちが彼女にとっての鍵だったんだ。









梅雨を迎えてすぐのある日。







部室に顔を出すと、放心状態の栞音ちゃんと九頭竜君、遊兎がいた。






栞音ちゃんの手には万年筆に写真が数枚。




その手が震えることで、彼女の手から写真がこぼれおちる。








それを拾ってみると、






「・・・なにこれ」





そのどれもの中心に、抉るような跡がある。









彼女は自分の撮った写真を、乱雑に扱うような人間じゃない。




彼女がカメラを愛していることは知っていたから、だから、私はてっきりそれを嫌がらせのたぐいだと思った。






彼女のもとへ駆け寄ろうとすると、遊兎が私の腕をつかみ首を横に振る。







・・・訳が、分かんないよ。








遊兎の腕を振り払って歩きだした、その時。







「・・・あ」



床に落ちていた誰かの端末が私の足に当たった。







白いクマのキーチェーンがついたこの端末は、まぎれもなく栞音ちゃんのもの。







拾い上げるとそこには、信じられない言葉が浮かびあがっていた。









「能力名・カッティングメモリー」








カッティングメモリー・・・・・想い出を、切り取る。

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友っち - 初めてのコメントです。最近読み始めたので、失礼かもしれないですが、どんなに遅くても、作品を読み切りたいです。頑張ってくださいね! (2015年11月30日 16時) (レス) id: be4f9f14c9 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗 - 初めてのコメント失礼します。私はこの作品を読みきりたいです。応援しています (2015年9月7日 22時) (レス) id: 1b9eafbb53 (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - 沢山のコメントがいただけて、驚く半面本当に嬉しいです。最近ようやく時間が作れるようになってきましたが、まだ小説を書けるほどの余裕はなくて…。もう少し、時間をください。すみません。 (2015年8月13日 18時) (レス) id: fb8f65ae95 (このIDを非表示/違反報告)
のえる@遙 - お久しぶりです(笑)スマートフォンからのコメントになってしまいましたが…。私としては鎖奈さんの手で終わらせてほしいと思ってます。高校が大変なのは十分分かっているのですが、お願いします!受験合格いたしました(笑) (2015年8月11日 14時) (レス) id: 2c50856b56 (このIDを非表示/違反報告)
月片 - 私は、いいとかわるいとかの基準がわからないけど私にとってはとてもよい作品なので最後まで読みたいです (2015年7月16日 22時) (レス) id: f00d58d32a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鎖奈 | 作成日時:2014年4月13日 12時

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