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magic 31 ページ2

赤間君が去っていったことで、人だかりの輪が徐々に崩れる。




なんだか立っていられなくなって、私は床に座り込んだ。









「先輩っ・・・大丈夫ですか!?」







駆け寄ってくるアスヒ君の手を払い、大丈夫と首を振る。



・・・・・今の私は、ちゃんと笑えているんだろうか。









「ここにずっといるのもどうかと思うし・・・・・屋上にでも行っていいかな」



そう言うと、アスヒ君は快く了承してくれた。




もしかしたらひどい顔をしていたのかもしれない。









アスヒ君はいつも、私のわがままを嫌な顔一つせずに聞いてくれる。






本当はそれに頼り切るのはよくないと分かってはいるのだけれど、


いまはただ、誰かの優しさに甘えていたかった。









アスヒ君と一緒に屋上への階段を上る。



・・・・・・・よく考えてみれば、2人一緒にこの階段を上るのは初めてだ。





普段の部活では大抵どちらかが先に来ていて、そのあとにどちらかが来る・・・・・・・

そんな感じだったから。






なんだか新鮮かもしれない、そう思った。









屋上へと続く長い長い階段を上りきり、2人同時にため息をつく。



そして、いつも部活で座っている“なんとなくここ”というところに腰を下ろした。








そして、しばらくの間広がる沈黙。





それを破ったのは、アスヒ君のほうだった。








「・・・・・・先輩・・・・申し訳ないのです・・・・・」




アスヒ君は床に目線を落とし、うなだれている。







「僕のせいで・・・・・僕が赤間代表に及ばなかったせいで、先輩が・・・・・」



ずっと握りしめていたのか、アスヒ君の綺麗な右手に赤くつめの跡が付いているのが分かった。









・・・・・・・そんなに自分を、責めないで。








「・・・・・・・アスヒ君の、せいじゃないよ」




うずくまったままのアスヒ君に、笑って見せる。





・・・・・・・・ちゃんと笑えていますように。






「でも・・・・・・・・・・・っ!」



瞳に涙を浮かべ、なおも言い返そうとするアスヒ君の頭に手をのせた。






「・・・・・・・・・アスヒ君は頑張った。


 だから何も悪くない・・・・・・・・・違う?」







そう言うと、アスヒ君の瞳からは、また涙がこぼれた。







「・・・・・・・・・・アスヒ君は、泣き虫だね」




そう言って頭をなでると、アスヒ君は少し泣いて・・・・・・・・少し、笑った。

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友っち - 初めてのコメントです。最近読み始めたので、失礼かもしれないですが、どんなに遅くても、作品を読み切りたいです。頑張ってくださいね! (2015年11月30日 16時) (レス) id: be4f9f14c9 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗 - 初めてのコメント失礼します。私はこの作品を読みきりたいです。応援しています (2015年9月7日 22時) (レス) id: 1b9eafbb53 (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - 沢山のコメントがいただけて、驚く半面本当に嬉しいです。最近ようやく時間が作れるようになってきましたが、まだ小説を書けるほどの余裕はなくて…。もう少し、時間をください。すみません。 (2015年8月13日 18時) (レス) id: fb8f65ae95 (このIDを非表示/違反報告)
のえる@遙 - お久しぶりです(笑)スマートフォンからのコメントになってしまいましたが…。私としては鎖奈さんの手で終わらせてほしいと思ってます。高校が大変なのは十分分かっているのですが、お願いします!受験合格いたしました(笑) (2015年8月11日 14時) (レス) id: 2c50856b56 (このIDを非表示/違反報告)
月片 - 私は、いいとかわるいとかの基準がわからないけど私にとってはとてもよい作品なので最後まで読みたいです (2015年7月16日 22時) (レス) id: f00d58d32a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鎖奈 | 作成日時:2014年4月13日 12時

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