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第21話 やめよう ページ45

「…悟は、何か嫌なこととかなかったの?」





Aは、小さい声でそう訊いた。



電話の向こうは、しばらく沈黙している。





『まあ、何か特別嫌なことがあったわけではないけど

戻りたいとは思わないかな、別に』



「…そっか」





戻りたくないのは悟も一緒なんだなと思うと、少し嬉しいA。





「傑とか硝子とか、帰省するのいっつも楽しみにしてるからさ、何か自分はみんなとは違うんだな〜って思うよね」



『…うん』





その返事の後、しばらくの間会話は途絶えた。




ただじっと、ケータイを耳に当てて

何か音が聞こえてくるのを待つ。




先に口を開いたのは悟だった。





『俺のこと憎んだりしてねぇの?』



「え?」



『俺がいなかったら、あの家でそこまで苦労することなかったんだろ』





Aは、しばらくじっと考え込んだ。





「…別に憎んでないよ。悟がいてもいなくても、あの家にいる限り苦労はしただろうし」



『…そっか』





悟は小さな声でそう返事をした。





「てか、何でそんなこと聞くの?」






今日の電話越しの悟は、妙にAの個人的なことを聞きたがる。



これは、悟にしては結構珍しいことだった。



普段の悟は、周りの深い事情には基本足を突っ込まないで、興味なさげにしていることが多いから。





『俺といる時、何か我慢してるんじゃないかと思って』



「我慢?」





きっと悟は、自分と一緒にいると実家での辛い経験を思い出すんじゃないかと言いたかったのだろう。



でも、Aは少し考えてみたけれど、悟といる時に自分がしている我慢については心当たりがなかった。





「…してないよ、大丈夫。家でのことなんか、もう大して覚えてもないし」





宥める様な口調で、Aが少しだけ嘘の混ざった言葉を吐くと

少しの間も開けないで悟は言った。





『じゃあ何で、お前は俺のこと嫌いなの』





あまりにストレートで、Aの真意を渇望している様な声色に

突然隠し事を打ち明けざるを得ない状況に投げ込まれたときのような、冷ややかな焦りを感じるA。


手のひらが、じんわりと冷たい汗に濡れた。


まるで、嫌っていることを責められているかの様な気分だ。





「…そっちだって、私のこと嫌ってるじゃん」



『その理由はなし。

じゃあ分かった。俺はお前のこと嫌ってない。この前提で考えて』



「はぁ…?」






…面倒事に巻き込まれたAであった。

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ヤハウェ(プロフ) - Wolf @ 元フェアリーさん» 禿同 (7月15日 16時) (レス) @page48 id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
Wolf @ 元フェアリー(プロフ) - ちょっとそのバイト店員さんそこ変わって欲しい (7月15日 14時) (レス) @page48 id: ebc545326a (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - あい(^_−)−☆さん» お前の心臓の支配権は…僕にある…‼️チェッックメイトォォ‼️ (7月15日 8時) (レス) id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - なゆさん» おっと、君は僕の使徒かにゃ??面白い!と思ったら大体僕だと思いますよ。面白いという概念を生み出しているのが僕なので(?)こちらこそあざ‼️ (7月15日 8時) (レス) @page47 id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
あい(^_−)−☆(プロフ) - なんかすごく心がキュンとしたって言うかなんて言うんだろう深い.... すき..❤︎ (7月14日 23時) (レス) @page46 id: 86f9264a88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヤハウェ | 作成日時:2023年7月7日 2時

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