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「Aは?卒業後はどうすんの」






硝子は、Aに話題を振った。


Aは言いたくなさげな顔でテーブルに突っ伏して






「私は、家戻らないとだなぁ」






と、小さな声でそう呟く。




「家」とはもちろん禪院家のことである。




Aは元々高専に入るまで、禪院家の術師集団である「炳」に属していた。


高専を卒業したらまた炳に戻るという約束を、禪院家としているのだという。




傑も硝子も、同じく御三家の人間である悟すらも

卒業後も高専という場で繋がれるのに

自分だけが実家に戻らなければならないのが、Aは辛かった。




でも、辛いとは言わなかった。


辛いと思えば思うほど、避けられない未来への絶望感は大きくなってしまうから。






「約束とかはさておき、Aは戻りたいのかい?」




 

傑が尋ねる。


Aは小さく首を横に振った。




きっと3人とも、未来を自由に選べない自分を哀れんでいるだろうと思って、Aは悲しくなった。




自分以外の3人は、卒業後も今日みたいに集まって話をすることができて


自分だけが、あの自由のない家でただの駒として生きていくのだと思うと、どうしようもないほど苦しくなった。






『イヤなら戻んなきゃいいじゃん』






悟はあっけらかんとして言う。



Aは、少しだけ顔を上げた。





…悟は何も知らない。




Aが禪院家でどういう役割を与えられてきたか、何のために育てられてきたか

そして禪院家にとってAの存在が、どれほど価値のあるものであるかについても。




戻りたくないから戻らないなんて、そんなワガママが

あの家に通用するはずがない。






「でも……」




『ビビってんの?』






悟が揶揄うように言って、Aはキッと悟を睨みつける。



Aには、悟の無邪気な表情が自分の苦しみを軽んじているようにしか見えなくて、腹が立った。



でも、そんな気持ちはすぐに消えてなくなった。






『俺らが味方サイドに居んのに、怖いもんなんかあるわけねぇじゃん』






当たり前のこととでもいうように、悟はそう言ってAの頬を摘む。



Aは顔を顰めて、すぐに悟の手を払い除けた。








——話題はすでに別のものへと移っていたが、Aはずっと考えていた。



もしかしたら、このことについて深刻に考えている自分が間違っているのかもしれない…と。






そう思うと、喉の奥が熱くなった。

第12話 お前といると疲れるよ→←第11話 ビビってんの?



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ヤハウェ(プロフ) - Wolf @ 元フェアリーさん» 禿同 (7月15日 16時) (レス) @page48 id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
Wolf @ 元フェアリー(プロフ) - ちょっとそのバイト店員さんそこ変わって欲しい (7月15日 14時) (レス) @page48 id: ebc545326a (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - あい(^_−)−☆さん» お前の心臓の支配権は…僕にある…‼️チェッックメイトォォ‼️ (7月15日 8時) (レス) id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
ヤハウェ(プロフ) - なゆさん» おっと、君は僕の使徒かにゃ??面白い!と思ったら大体僕だと思いますよ。面白いという概念を生み出しているのが僕なので(?)こちらこそあざ‼️ (7月15日 8時) (レス) @page47 id: 4505794e30 (このIDを非表示/違反報告)
あい(^_−)−☆(プロフ) - なんかすごく心がキュンとしたって言うかなんて言うんだろう深い.... すき..❤︎ (7月14日 23時) (レス) @page46 id: 86f9264a88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヤハウェ | 作成日時:2023年7月7日 2時

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