プロのヒモが居候先を完全に間違えた話〈中編〉【伏黒甚爾】 (ページ47)

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次の日の朝、２人はいつものように

Aさんの作った朝ごはんを食べた。

Aさんは、社畜時代とは打って変わって食材にきちんとこだわるようになって、美味しいご飯を作れるようになった。

こんな風に、誰かと一緒に食卓に着いて

幸せな気持ちでご飯を食べたのは、甚爾さんとが初めてだった。

こんなに自分を大切にしてくれたのも

ずっと一緒にいてくれたのも

わがままを聞いてくれたのも

世界中で一番、自分を愛してくれたのも

全部全部、甚爾さんが初めてだった。

今まではずっと、誰にも振り向いてもらえなかった。

いつも、みんなに嫌われた。

何も悪いことをしていなくても、自分がそこにいるだけで

周りの人たちがみんな悪人に変わった。

そして自然と、自分が悪いんだとしか思えなくなって

毎日悩んで、落ち込んで

そのまま大人になって

働いて、怒られて、残業して———

厄介な体質を生まれ持ち、周りからの呪い(悪意)を一身に受け続けてきたAさんが

初めて、安心して寄りかかることができた人。

明らかに怪しくて、ワルそうで、怖そうだけど

Aさんにとってその人は、世界で一番優しかった。

命懸けで自分を守ってくれて、それと同時に守ってあげたくもなるような

文字通り、自分の中の一部であるかのように大切な存在だった。

ギャンブラーだろうと、実家がど畜生だろうと、人殺しだろうと

世界で一番、大好きな人だった。

「甚爾さん、どっか行くの？」

『ちょっくら金を賭けに。お前も来るか？』

「いや、留守番する」

Aさんは「今日は勝てるといいね〜」と笑顔で甚爾さんを見送ります。

甚爾さんは大きな手をAさんの頭に乗せて、わしゃわしゃと撫でました。

まあ、今日も賭けには負けちゃったんですけど。

甚爾さんは帰り道の途中、何か買って帰った方がいいものがあるかと思い、Aさんに電話をかけましたが

Aさんは出なかったので、そのままお家に帰りました。

いつものように、自分を帰りを待っているAさんの声をすることを期待しながら、玄関を開けました。

しかし、甚爾さんの視界に飛び込んできたのは

畳の床の上にうつ伏せで倒れているAさんと

高「おかえり。遅かったな」

『……は？』

後編に続く