プロのヒモが居候先を完全に間違えた話〈中編〉【伏黒甚爾】 (ページ24)

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第１４話ページ24

部屋に豪華なお食事が運ばれ

温泉かよ！？って感じのお風呂に入れさせてもらい

自分がただのもてなされた客としか思えなくなってきたAさん。

すっかり夜になり、お部屋でくつろいでいると、戸の向こうで足音がしました。

そして、自分の名前を呼ぶ声。

走って戸を開けに行くと、外には甚爾さんが立っていました。

やっと到着したみたいです。

安心して、甚爾さんに抱きつくAさん。

『変なことに巻き込んで悪かったな。何かされてねぇか』

「大丈夫。これでもかというくらいもてなされてる」

禪院家が用意した和仕様の寝巻きを着ているAさんは、可愛くて新鮮です。

『これから行くところがあんだ。もうちょっとここで待ってろ』

「…分かった」

甚爾さんは誰かにお呼ばれしているようです。

戸のところに立って話しているAさん。

外の廊下に、何やら突っ立っている人影を見つけました。

「あ、」

『？』

甚爾さんがAさんの視線がある方に振り向くと、直哉くんが突っ立っていました。

甚爾さんが最後に見た時はまだ9歳だったので、すっかり大きくなっていて全然誰だか分かりませんでしたが。

直「…甚爾君や」

そう名前を呼ばれて思い出す甚爾さん。

『…あぁ、直哉(だっけ？)か』

名前こそうろ覚えですが、自分の悪口を言う人ばかりの禪院家の中で、位が高いにも関わらず甚爾さんにキラキラした憧れの眼差しを向けて絡んできていた少年なので、存在はよく覚えています。

直「(覚えてくれとる…！！)」

嬉しさで固まっている直哉くん。推しを前にするときょどるタイプ。

まあ５年ぶりだし、中二(14歳)だし、ちょっと気まずいのかね。

甚爾さんは直哉くんからAさんに視線を戻すと、行ってくる、と言って廊下をスタスタ歩いて行きましたが

ふと途中で止まって直哉くんの方に向き直りました。

『おい直哉、』

直「！」

『そいつに何かあったときは頼んだ』

直「……」

頷くことすら出来ず棒立ちの直哉くんをよそに甚爾さんはまた歩き出しました。

・

それからAさんの部屋に滞在している直哉くん。

直「甚爾君、全然変わってへんかったわ！何か、前より男前になっとる気はするけど。な、そう思わへん？」

「私、前の甚爾さん知らないから…」

それはまるで推しを語れる同志を見つけたオタクの如し。