15話 執拗 ページ16
夕方4時ごろ、そろそろ日も落ちようとしていた。
Aも既に閉店準備に取り掛かっている。
結局今日来た客は、数える程度。
趣味のような経営のため、赤字でも問題はないのだろう。
Aは店先に置かれた薔薇の花の入ったバケツを持ち上げ、中へと運びこんだ。
「ねぇ、Aちゃん。
良かったら俺と一緒に夕食でもどう？
Aちゃんのためなら奮発しちゃうよ。
近くのホテルの中に新しいレストランができたんだって。
あ、ホテルっていってもやましいことはないからね！」
隣で茶々を入れてくる店主に、Aはだんだんと腹が立ってくる。
そーですね、と適当に流しながら彼女は淡々と片付けをしている。
相変わらず自分一人で会話を広げていく店主の長い話は、流石に堪えるものがある。
今日は特にしつこかった。
「Aちゃん彼氏とかいるの？」
「いないですよー……」
Aはどうでもよさげに返事をする。
「じゃあ、俺と一回くらい…ね…？
俺優しくするから大丈夫だよ。」
Aの生活費を支えるため、わざわざ必要のないバイトとして雇ってくれているのは、彼女自身もよく理解していた。
もちろん、そこはとても感謝している。
きっとこの体が、正真正銘彼女だけのものだったら、Aはさっさと体を売っていたのだろう。
しかし、今の彼女の体は悪魔のもの。
穢すわけにはいかないのだ。
「ダメです…あの…この話何度目ですか？
いい加減諦めてください…」
Aがそういうと、相手もそろそろ我慢の限界か、苛々とした口調で彼女を捲し立て始める。
「あのねぇ、Aちゃん。
この店、正直人手なんて足りてるわけ。
Aちゃんを雇っているのは、俺の優しさなの？
わかる？
普通は恩返しってものを考えるんじゃないの？」
ついに化けの皮が剥がれた。
プレゼントの包装用紙を破り捨てるかの如く、彼の優しさは粉々になって散った。
彼は一歩一歩着実に、Aに詰め寄っていく。
豹変した彼は人間とは思えない、いやむしろ本能に従って人間らしくなったのか、欲望に支配されていた。
「感謝はしています…でも…本当にダメなんです…やめて下さい…」
喉から震える声を絞り出しながら、Aもゆっくりと後退りをしていった。
彼女の声は彼にだけでなく、自分に言い聞かせているようでもあった。
その時、移動したバケツに彼女の片足が引っかかる。
「あっ…！」
片足の自由を無くし、バランスを崩したAは思い切り背後に倒れた。
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米 - めっちゃいいです！ーーーーー！！！更新おねがいします〜〜 (11月27日 20時) (
レス) @page22 id: 391b553e6b (このIDを非表示/違反報告)
さじ(プロフ) - ストーリー性があってすごく面白いです！これからも楽しみにしていますっ！ (2021年10月28日 0時) (レス) id: c7307675fc (このIDを非表示/違反報告)
ゆいろ - めちゃくちゃ面白いです､､､！ＢＣの小説の時点で神なんですが、それに加えてヤンデレ&読みやすくて、もう最高です、、、！更新待ってます！ (2021年8月24日 22時) (レス) id: 56d14b10d4 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです！続きを待ってます！(*´ω｀*) (2021年8月2日 12時) (レス) id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
見切れる人。(プロフ) - いなりさん» 応援ありがとうございます！励みになります！いなりさんのBC短編小説もいつもニヤニヤしながら楽しませていただいてます(´∀｀) (2021年2月21日 22時) (レス) id: 09a404df72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：見切れる人。 | 作成日時：2021年2月1日 1時
