【w/r/w/r/d】忘れられる事なき【軍パロ】 (ページ5)

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しんぺい神は、我々国からブール国へ走るデイムラータイプの後部座席に揺られていた。

「…憎しみの塊やなあ」

先程の彼を思い出して、呟く。
なにかと発言は一撃が重く、煽る時は人一倍煽る彼は、それ以上に仲間思いの一面も強い。
だからこそ、そんな彼が見たという「エーミールがブール国の軍人とともに逃げた」と捉えた光景は、正義感の強かった幼少期の彼にはあまりにも衝撃的すぎたのだろう。

──────────ほかの幹部達は、どう捉えているのか。

しんぺい神だけが直接エーミールから“あの日”の事情を聞いたことがある。だからこそしんぺい神は誰よりも彼を擁護しているし、トントンにもあのような言い分だった。

直接彼に言われたことを言えばいい、と思うかもしれないが、だいぶ複雑な事情だった故に、本人からの口でなければ説得力が無い、としんぺい神は判断していた。

「─────医殿、軍医殿。着きましたよ。」

「えっ？ああごめん、ありがとう。」

あまりにも長い考え事をしていたらしい。急いで車から降り、いつもの医務室へ向かった。

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「ただ今帰りました～…ってあれ。」

「おや…しんぺい神さんでしたか。お疲れ様です。」

総合医務室の隣の治療室の扉を開けると、いつもいるはずの研究員生もとい部下は何故か不在。その代わりというように、軍隊長のエーミールが、包帯の切れ端を持ったまま敬礼してきた。こちらも軽く敬礼した後に「なにしてたの？」と問えば、「万年筆で刺してしまいまして。フタするの忘れてました」なんて返してきた。

「あれ？どこ行ってたんでしたっけ？」

「ちょっと会合にね。…あ、はさみ預かるよ～」

「ああ、ありがとうございます。…そうでしたか。」

特に追求してこないエーミールに内心ほっとしながら器具の片付けを手伝う。我々国に行ったと知っているのは、今日車を運転してくれた部下1人だけだった。

今は軍隊長かと疑う程穏やかな性格であるが、軍人として再会したときの彼は、酷く辛そうな目でこちらを見てきたのを覚えている。
しんぺい神とAはあまりにも年が離れていて、Aの物心がつく前に軍へ入隊したが、エーミールとは浅かったが仲が良かった。だから尚更、そのとき彼は表情を歪め、“あの日”の事への内心を、何回か打ち明けられたのだ。

──────────静かな雰囲気が漂う医務室で、なんとかしたいと焦る彼がいた。