【w/r/w/r/d】忘れられる事なき【軍パロ】 (ページ3)

今日:6 hit、昨日:9 hit、合計:10,137 hit

3 ページ3

ブール国、軍事館。

『あれ？しんぺいいないの？』

「申し訳ないです特隊長殿。現在会合のほうへ出張でして…」

『そっかそっか。大丈夫。ありがとうね』

軍事館内、医務研究室。
Aは医務室のリーダーである彼の元を尋ねたが、不在だったらしい。特に用事もなく来たのでまあいいか、と思いながら廊下を歩く。

今日は早朝から偵察の任務があったため、報告書さえ出せばあとは自主活動のみだった。先程報告書を出したAは、実質もう仕事が終わり、と言っても過言ではない。

とはいえ、ずっと休んでいるわけにもいかないのが現実であった。Aの属する部隊は“特殊部隊”。名前の通り、他の軍とは違う動きをする。増援要請がかけられれば、偵察要請も、更には簡単な事務まで頼まれることもある。

ブール国軍の幹部達が急遽編成した組織だが、いうならばここは「扱いにくい人間の集まり」でもあった。Aは単に性別的な問題でここに来たが、他の面々を見れば、「常識はあれど集団になじまない」「クビにするには勿体無いぐらいの身体能力はあるが性格が異常」などなど、その程度である。
いろんな意味で特殊部隊であり、その部隊をAは長として、前期から任されていた。

胸にじゃらつくメダル型の略綬は、部隊長の印である。

「その歳で部隊長とは。はは、初心を忘れん奴やなあ。」

────貰った日にエーミールから言われた言葉である。

略綬に対して注意を払う度思い出すこの言葉は、毎度Aを疑問で満たす。彼のいう自分の初心は、なんだったか。思い当たる節はいくつかあったが、その結論にたどり着く前に、ひとつ置いて考えてしまう。

『…エーミールさんは、あっちに行きたいと思ってるのかな…？それとも、会いたいだけ？』

誰もいない廊下でぽつり、と呟く。
いくら二人になった時に水入らずの話をしていても、それだけは聞けなかったのだ。この若さで女の部隊長として働くAは常に冷たい視線を注がれる。そんな中で味方でいる数少ない人間こそが、エーミールであった。地雷を踏みかねない話題は、避けたかったのだ。

『…まあいいか、いつか、いつか聞こう。』