【w/r/w/r/d】忘れられる事なき【軍パロ】 (ページ11)

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ブール国、Aの自室にて。

『……っ、は、ぁ。』

あれから、ひたすら走って自分の部屋へ戻った。Aにとって、あまりにも辛すぎる話だった。

ドアを閉めたAは崩れ落ちて、村のことを考えた。

あの村の空気が誰よりも大好きで、
あの村に咲き誇る赤い花が好きで、
あの村にいたみんなを愛していた。

“あの日”は本当に辛かった。Aにとって全てだった村は焼け野原になり、今や軍隊長の彼としばらく離れ離れになったし、数年後には年齢の事情で色んな仲間が徴兵されて別れた。
それでも数年間、戦争孤児として協会で保護された皆と協力した思い出は大切なものであり、それはレーベン村でつくった思い出であった。…それから何年か経って、今の我々国がブール国にモルテ地方として土地を譲渡して、とうとうみんなと別れた。
──────譲渡の条件に、〔現時点でレーベン村にいる男性全員を含〕んでいたからだ。私だけ、残されたのだ。

“あの日”から崩れたAの生活は、何回死を覚悟したか分からない。戦争が嫌いなのに、それでも軍に入隊したのは、最初に別れてしまった彼からの勧誘だったからだ。入隊して、救われたと言っても過言ではない。

そしてなんとか救われて、今こうやって生活できている。
でも、また、もう1回崩れるならば。

『……………今度こそ救いなんて、』

涙がぽろ、と零れ落ちてきた。何粒も、何粒も。
本当に一人になってしまう。ようやく再生し始めた草木や花が、また炎の一部になる。しかも今度は、自分の手でそうする事になる…

『…怖い、こわいよ……』

月は雲に隠れて光が弱く、部屋は一段と暗かった。
まるでAの心情のように。