【w/r/w/r/d】忘れられる事なき【軍パロ】 (ページ1)

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ブール国、軍事館。

秋晴れの日差しで陽気に包まれた館内に、ノックが響く。その中には、珈琲を飲みながら優雅に作業をする軍隊長と、その補佐がいる。とはいえ後者は、どこかへ出かけそうな様子であり、私がドアを閉める前に一礼して去っていったが。

完全に扉が閉まってから、目線の先の軍隊長へ一礼をする。

『失礼します。報告書の提出に参りました。』

「ああ、お疲れ…あとで見ておくよ。置いててもらえる？」

『了解しました。では…』

あまりこちらを気にせずに話すので、きっと多忙なのだろうと察してそそくさと事を済まそうと扉へ向かう、と同時に「あれ？」と小声で呟いた声を聞き取り、振り向く。

「特隊長、少し待て。…たしか今回の偵察場所は」

『はい？…モルテ地方の奥、北東の国境付近です。』

「……何か変わったことは？」

『…報告書に「A」

突然名前で呼ばれ、一瞬真剣な顔で見られたと思いきや、不意にその表情は柔らかくなる。

「地理的な問題とか、戦線状態は聞いてない。」

『え……、…“あの日”を思い出すくらい真っ赤な彼岸花が咲いてましたよ。

エーミールさん。』

「随分文学的やな…そうか、もう15年経ったんやな…。」

『まだ14年です。』

「はは、Aも随分生意気になったなあ」

『いつまで子供扱いなんですか…そういう貴方こそ、つい最近まで平和主義だった覚えがありますよ？』

「俺は戦争屋じゃないんやけどね」

『肩書きだけご立派なこと』

「人のこと言えへんな、それ。」

数年前まで、なんの意識もなくこんなやりとりをしたな。とAは思った。
13歳で、無茶して軍に入ると言った私に、優しく指導にあたってくれたのは彼だったのだ。

「あいつらが見たら吃驚するやろな、Aのその姿。」

『今のエーミールさん凄くおっさんでしたよ。』

「えっ！？」

15年前、小さな村にいた100人満たない子供。その中で仲の良かった十数名と一緒に暮らすことはできていない。

それでも彼らは思い出し、懐かしんでは夢を語る。
きっとほかの幹部がこの光景を見たら、上下関係がなんとやらと文句を言ってくるだろうから、誰もいないこの時間だけが、昔のように話せるときだった。

────────彼らは望む、不透明な未来を。