♡ 46 ページ6
当日のあたしの動線を考えていたら
外が真っ暗になってしまっていた。
観客席で見ておこうかと思ったが、何かあった時に
あたしが裏にいた方がいいかなという方向で決める。
丸めていた背中をグッと伸ばして周りを見渡せば
まだカバンが2つ残っていた。
モカちゃんと…小瀧。
2人で練習してるんや。
…さすがやなぁ。もう文句つけるとこないのに。
体育館の鍵は責任者のあたしが持ってるし閉めなあかんけど…
渡して帰るか。
電気を消して、教室を出る。
すると前方からモカちゃんが走ってくるのが見えた。
｢お、おうおう…どうしたん？｣
｢はぁ…A…ちゃん｣
｢もう暗いし帰らなあかんよ、小瀧は？｣
暫し呼吸を落ち着けた彼女がゆっくり口を開く。
｢Aちゃん…小瀧くんと仲直りして下さい｣
｢…ん？｣
｢前までの演技と違うって小瀧くん自分で分かってるねん。
理由も、教えてくれてん。
Aちゃんに酷いこと言ってしまったって、そのことが
ずっと頭にあるんやって。集中出来ひんって｣
…なんで、モカちゃんが泣きそうなん。
｢だから、だから…小瀧くん許してあげてほしい。
私何があったか知らんし私が言っても
ムカつくと思うんやけど、お願いします…｣
卑怯やな…小瀧。
こんな可愛いお姫様使ってさ。
こうでもしやんとあたしが動かんの分かってたん。
どうせ、もう終わるのに。
文化祭終わったらもう…
｢お願い…私ね、演技中だけでも
小瀧くんに見てもらえてるのが嬉しかった。
それ以外ずっとAちゃんのこと見てて、
ほんまに全然…入る隙なくて｣
ずっと、あたし見てた？
なんの間違い？
隣にモカちゃんがいるのに。
｢まだ小瀧くん残ってる。もし許してあげてくれるなら
体育館行ってあげてくれんかな…｣
そんでこの子はなんで、自分より相手の幸せを全力で願えるの。
頭下げてまであたしに行ってほしいって。
そんなことしたってモカちゃんに何の得もないのに。
小瀧。
ほんまにこの子より…あたしを見てた？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 306人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カジャ
| 作成日時：2022年10月18日 19時
