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昨日で衣装や背景、道具類は全て完成した。
与えられた最後の体育館練習。
前はやらなかったが小瀧の野獣から王子への変身シーンも
練習に含める。
映画のようにいかないあの場面。
オリジナルで時間稼ぎシーンを入れ、その間に小瀧は
被り物と角を外して髪を整え再び舞台へ出るという
この劇で最もハードなところ。
「野獣、間に合わなそうなら何秒かやけど引き伸ばすし」
『おう』
野獣は真実の愛を知る。
暗転し、事前に録音した野獣のセリフが流れる。
1分もないような時間の中、暗闇で小瀧は戦わないといけない。
もちろん最初から崩れないように小瀧が自分でセットしているが、被り物を被れば全く崩れないというのは無理な話。
他のキャストの子から聞くには、ここをだいぶ練習したらしい。
家でも鏡の前で1分測り、なんとかギリギリ出れるようにまではなったとか。
時間が迫る。
5,4,3,2,1……
照明がついた。
ベルの隣に、王子が立っている。
クラス全員から拍手が起こった。
『ベル……』
セリフが進む。
やっぱり小瀧の表情の良さ全部は出ていないけど
観客は満足してくれるレベルだろう。
小瀧望と夢原モカが主演というだけで、
きっと皆大いに湧いてくれるから。
見事不安を払拭し、本当に最後のゲネプロが終わった。
セ「なぁ!せっかく衣装とか全部着てるし宣伝動画撮ろ!」
元気よく手を挙げたセナの提案に皆が乗る。
何するんやろ…と思って見ていたら、セナが小瀧の背中を
押して袖にはけていった。
ちくり。
長らく感じていなかったそれが久々に胸を刺した。
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作者名:カジャ | 作成日時:2022年10月18日 19時