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いつも通りわざわざ小瀧はあたしを
家まで送ってくれて。
初めてちゃんと手を繋いで帰る夜。
彼は隣でニコニコ幸せそうな顔をしてる。
『あー帰りたくないなぁ俺』
｢明日も学校やん｣
『Aさんは寂しくないん？』
寂しいか寂しくないかって言われたらそりゃ寂しい、けど。
｢…まぁ、寂しい｣
『…どんだけ可愛いねんもう』
｢小瀧が聞いたんやろ笑｣
『帰ったら電話していい？』
男の人と電話なんていつぶりやろう。
上手く話せるか分からへんけど、頷いた。
そっか…そういうこともするよな…
電話とか、LINEとか、毎日。
『…A』
｢え？……！！｣
家に着いたと思った途端、彼の顔が目の前だった。
唇に触れた小瀧の同じもの。
中学生の時にも経験したはずの行為なのに全然違う。
すごく心臓が高鳴った。
鼓動がうるさいほど聞こえる。
好きな人に、しかもこんなかっこいい人に名前を呼ばれて
キスされるって…こんなに幸せなもんなんや。
『ふふ笑 ちゅーしちゃった、恥ずかしっ』
狡い。狡すぎる。
幾度となく思ったことをまた思う。
可愛い顔もかっこいい顔も照れた顔も拗ねた顔も
あたしの心臓を早くさせる。
『照れてる笑 もっかいする？』
｢は、はよ帰らな電車なくなんで｣
『えー…そうなったら泊めてもらおかな笑』
｢今日は勘弁して下さい…｣
『はは、せやな。今日は帰るな？また明日学校で』
頭に彼の大きな手が乗った。
｢お、おやすみ…なさい｣
『おやすみ。A』
そろそろ耐えられなくて、逃げるように家の中に入った。
そのまま前みたいにベランダまで駆け上がって
｢彼氏｣の背中が夜に溶けるまで、見送った。
その夜は、小瀧のくぐもった低く甘い声を聞きながら
いつの間にか寝てしまっていた。
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年10月18日 19時
