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後夜祭が始まるギリギリ。
というより10分程遅刻だ。
小瀧がなかなか離してくれなかったから
もう体育館での漫才ライブの前説は終わってしまっただろう。
心を痛めながらも忠犬ハチ公を教室に置いて
竜雅くんの姿を探す。
体育館の1番後ろで立っていたから、すぐ見つけられた。
｢ごーめん、遅れた｣
竜｢…小瀧が離さんかったんやろ笑｣
｢まぁ、笑 前行こ｣
ここからじゃ遠くて全然分からんと前に行こうとした。
あたしの手を、竜雅くんが握る。
前髪で若干隠れた目は真剣にあたしを貫いていた。
あたしは今やっと竜雅くんがあたしを好きなんだと実感する。
竜｢ここがいい｣
真っ直ぐだ。
他の何にも邪魔されず、真っ直ぐあたしを見てる。
いつからそんな目だったんだろう。
全く気づいていなかった。
｢うん。分かった｣
･
･
･
空はだんだん暗くなる。
漫才に、軽音部のライブ。
先生たちの出し物もあった。
面白かった。
でも、それだけ。
ただ前に夢中で、また彼の目には気づかなかった。
彼が、舞台よりあたしを見ていたことなんかには。
全て終わってあたしたちは1番に体育館を出る。
面白かったねと感想の一つや二つ話したかったけど
目の前を歩く竜雅くんはそれどころじゃなさそうだった。
その背中は、何かを拒絶してるようにも見えた。
竜雅くんは体育館の裏に歩いてく。
彼が勇気を出した場所で、あたしもまた勇気を出さねばならない。
竜｢…返事、くれる？｣
立ち止まった彼はあたしを見ない。
もう分かってるんや。
分かってて聞くんや。
だから、あたしもちゃんと。
｢告白ありがとう。この文化祭色んな意味で
竜雅くんに助けられたし、めっちゃ感謝してる。
でも…ごめんなさい。あたしは小瀧が好きやねん｣
花火が始まるアナウンスが流れる。
彼はあそこで、あたしを待っている。
竜｢…うん、そやんな。ありがと。小瀧のとこ行き？｣
暗い。
彼の表情は見えない。
少し震えてた彼の声も、聞こえなかったフリをしよう。
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年10月18日 19時
