♡ 54 ページ14
被り物、角をそこらにほっぽった小瀧の前に
大きめの鏡を出す。
衣装の子がそれを片付けつつ、汗を拭いて。
少し潰れた髪をわしゃわしゃ立ち上げる小瀧。
あと40秒。
立ち上がってきたところでマナミが汗で流れた
小瀧のアイシャドウを少し塗り直す。
あと20秒。
神業というべき速さで元のセットにまで戻した
小瀧の衣装を整え、ビジュアル満点で
また舞台へ戻ったのは照明がつく3秒前。
プロのごとく彼は照明の下で堂々と微笑む。
その姿にまた、黄色い歓声がそこら中で巻き起こった。
【『ベル…俺は…元に戻ったのか?』】
【「ええ、とても素敵な姿だったのね…」】
2人が見つめ合う。
魔女の呪いがとけ、最後はガストンとル・フウ以外の
キャストが舞台に立つ中、主役2人のハグで劇は終了。
全て終わった。
この1ヶ月ほどの全員の頑張りは、割れんばかりの
拍手と歓声、指笛で報われた。
暗転後、エンディングのBGMが流れてキャスト紹介。
それに加えてなぜかあたしだけそこに参加して。
全く舞台に現れていないにも関わらず
1番大きな拍手をもらったのではないかと思うほど
湧いてくれていた。
「 めちゃめちゃよかった!!」
「 望くん主役にしてくれてありがとう監督さん!」
「 モカちゃんベルでよかった!」
「 監督天才!!最高!」
嬉しくて、不覚にもこんな大勢の前で
涙を流してしまう前に退散。
袖では既に泣いている子が何人か居た。
【 これにて、2年3組美女と野獣の演劇は終了しました 】
【 後ろの方から順番に出口へお願いします 】
無事に大成功という形で、幕は閉じたのだった。
306人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カジャ | 作成日時:2022年10月18日 19時