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金曜日は部活がないらしく。
久しぶりに放課後を解放されたあたしは
借りていた本を返そうと図書室へ向かう。
高校生になって本を読むために図書室に行く人は少なく
いつも閑散としているここはあたしのお気に入り。
借りてた本を返却棚に返し、部屋の奥に置かれた椅子に腰かける。
じーっと辺りを眺めて面白そうな本を見つけると
1冊だけ読みきって帰る。
偶然にも金曜日だけのあたしのルーティン。
今日は…あ、あの人の最新作置いてある。
テレビで紹介されてためちゃくちゃ人気作。
これにしよ。
ページを捲ればすぐに小説の世界。
エアコンの音すら聞こえないぐらい集中してしまう。
夕日がだんだん傾き沈んでいこうとも、電気もつけない。
あたしだけの楽園。
･
･
･
終わった。
この作者さんはあたし的にハズレがないんよなあ。
さすがとしか言いようがない伏線の張り方に繊細な言葉遣い。
人気作なだけある。
1人で余韻に浸っていると、外から駆けてくる足音が聞こえた。
あたし以外にも部活なしでこんな時間までおるんや。
その足音は図書室の前で止まって、何と扉を開けた。
返却期限やったとかかな…
やけにドスドスいわすなぁ。
｢あ、おったAさん！｣
ドスドスはあたしの後ろで止まる。
聞き覚えのある声に振り返れば、
笑みを浮かべた重岡が立っていた。
｢…何か用あった？｣
｢帰る時にあの3人とおらんかったから聞いたら、
今日は一緒に帰らん日やでって言われて探し回ったわ！｣
え、1時間もずっと探してたん。
…人探し下手くそ？
｢あんな、小瀧に渡してきてほしいねん｣
｢小瀧？何で｣
渡されたのはスポドリ。
キンキンに冷えてやがる。
｢ほんまは部活したらあかんのやけど、大会が11月にあるから
あいつ一人で練習してんねん。差し入れしたって！｣
いやぁ…自分で渡せばよいのでは…
｢小瀧の個人練見たらマネなりたなるかもしれんやろ！｣
だいぶ横暴だが、重岡に引く気はなさそうで渋々受け取った。
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年9月12日 21時
