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ここ座っといてと言われた椅子に
大人しく座っておく。
先生は居ないのか、ここでも2人きりだ。
『保冷剤どこやー冷蔵庫どこやーー』
｢そこ｣
小瀧の目の前を指させば、ははっと彼が笑う。
それからは保冷剤をタオルで巻いてあたしに差し出してくれた。
『ごめんな、俺のせいで』
｢いや小瀧悪ないから。大変やな人気者も｣
『そやねーん笑 そのくせ好かれたい子には好かれへん』
小瀧、好きな子おるんや。
やっぱモカちゃん？
隣のクラスのレイちゃんか？
誰やっても、小瀧の隣にぴったりな可愛い子か美人なんやろな。
甘酸っぱい感情が消えて灰色の雲が薄く心にかかる。
おかしいな…何でこんな気持ちになってまうんやろ。
｢小瀧は…小瀧はイケメンやしガンガンいけば落ちるやろ｣
『…ほんま？そう思う？』
｢あたしはな｣
何気にイケメンと言ってしまったことには
自分で気づいていなかった。
小瀧の恋なんて別にどうでもいいという気持ちと
少しだけ、実らんかったらいいのにって
最低な気持ちがせめぎあう。
どうしてしまった。
小瀧はただのクラスメイトで…ただ後ろの席のやつで…
席替えするまでなんの接点もなかった学年1のイケメン。
それだけ。あたしには遠い人や。
『Aさん、LINEとインスタ教えてくれん？』
｢んぇ？｣
『いや、その、劇のことで聞きたいこととか出てくるかもやし』
｢あ、あぁ。そういうこと。いいよ全然。
インスタほぼ何もしてへんけど｣
遠い人…やんな。
LINEには、夜景と共に佇む小瀧。
インスタにはどっかの壁でポーズを決めている
小瀧のアイコンが追加された。
文化祭が終わればこの関わりも終わる。
それまでや。灰色の気持ちも、文化祭が終わるまで。
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年9月12日 21時
