きみはペット（緑）

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カツ、カツと鳴り響くヒールの音。

静かな夜の街で、それは騒音のように聞こえるけれど
人がどう思おうが知ったこっちゃない。


ムカつく、ムカつく、ムカつく！


思い返せば今日は散々な一日だった。


通勤電車は混んでて脂ぎったおじさんたちに押しつぶされるわ、

使えない部下のミスを押し付けられるわ、

あのクソ課長(46歳独身)から「タカハシさん、もう30でしょ？あれ、29だっけ？結婚は？」ってセクハラまがいな嫌味言われるわ、


トイレで後輩たちが私のことをお局っていってるの聞いちゃうわで


絶賛ご機嫌斜めの私。


29歳独身の何が悪い！？
この国は今晩婚化が進んでるんじゃないんですか！
第一そこらへんの女の子たちみたいに、すきーって気持ちだけで結婚なんてありえないし
ちゃんと将来性のある、あんたみたいなチンチクリンの子豚じゃない素敵な男性と結婚しますから！


ミスを指摘しただけで、入社八年目でお局ですか、そうですか！
スタイルいいのかもしんないけどさー、あんだけ身長高いと女として可愛げないよねーってそれお局と関係あるんですか！
仕事もまともにできないのが可愛いなら、私は可愛げなんて欲しくないし！



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大人になってから、理不尽なことだらけだ。

どっからどう見ても間違えてることを、まるであってるみたいに、当然みたいにやり過ごさなきゃいけない。


だってそれが大人だから。


それも仕事だから。


嫌なことも全部込みで、仕事だから。


分かってはいても、やっぱり嫌なものは嫌で。


うん、やっぱりあの日の私は最高にやさぐれてて。


だから、あんな、今考えても

とても正気の人間がするようなものではない決断をしちゃったんだと思う。

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