ドーナツ ページ4
手元に現れた真っ白なシュガーに覆われたドーナツにかぶりつく。
しゃりしゃりしてて甘くて美味しい。
「〜〜〜!美味しい」
「なら良かった。
いただきます」
きちんと手を合わせてからパクリ、とAもドーナツをかじった。俺が食べてるのはいわばお供物の霊体みたいなもの。
ドーナツ自体はAが食べている。
小さな口で黙々とドーナツを食べるAを見ながら少し考えた。
Aの願いごとは、怪異となって七不思議とこの学園を見届けること。
怪異にする方法はある。だけど、それができる道具は一つしかない。
そして、その道具は性格と底意地が異常なまでに悪い。
失敗すれば何を奪われるか分からない。
そういう道具だ。
…嫌だな。
ずっとこのままこうやって、放課後に話したり一緒にドーナツ食べたりして過ごしたい。
消えて欲しくない。
でも、遅かれ早かれ一年以内にAは死んでしまう。俺のそばから居なくなってしまう。
それが寂しくて仕方ない。
「ねぇ、花子くん。私の寿命って正確には分からないの?」
「うん。具体的には何も。
寿命が近いってだけ」
どういう死に方をするのか、どこで死ぬのか、それすら分からない。
明日は会えるのかな。
明後日は会えるかな。
そんな心配ばかりしている。
春が終わって夏が来た。
うだるような湿気と暑さの中、といっても俺は暑くもなんともないけどAは暑そうだ。
比較的涼しい校舎の隅を見つけ、そこで話している。
Aの寿命はまだ来ていない。
ソーダ味のアイスキャンデーをしゃぶりながら、ふいにAが言った。
「明日から夏休みだから、しばらく来れないよ。
…ねぇ、私の願いごといつ叶えてくれる?」
とうとう言われてしまった。
Aから願いごとの催促がされたのは初めてだ。
もう、誤魔化せない。
いっそ、叶えられないと言ってしまおうか。
怒るかな、もう旧校舎に来てくれなくなるかもしれない。寿命は刻々と迫ってる。いつ会えなくなるか分からない。
「、えっと、その……」
Aは続け様に質問することなく、じっと俺の返事を待っている。
数十秒の沈黙が流れても、俺が話すまで待つつもりなんだろう、じっと待っていた。
あぁ、もう駄目だ。
「_______ごめん。
聞いてA。
俺、Aが好きだよ」
暑さは感じないのに、体がひどく熱かった。
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ほのか - やばい。私の好みにどんぴしゃり! (2020年8月4日 9時) (レス) id: ef884c23cc (このIDを非表示/違反報告)
?返事がない、筆記試験終了の安心で寝ているようだ(プロフ) - ひえっ、めっちゃ細かく考えられてる、すげぇ… (2020年2月15日 8時) (レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - 乾 巽さん» ですよね!!うぅ〜......土籠先生... (2020年2月5日 17時) (レス) id: f38b18c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - すばるさん» そうなんですか…いきなりログインできなくなる系困りますよね (2020年2月2日 17時) (レス) id: a83f0b56fb (このIDを非表示/違反報告)
すばる - 乾 巽さん» わああ!!ありがとうございます!!!それがですね、設定ってどこぞや?と思って血眼で探したらログインしないと出てこない系でした...Wii Uなんで、前ログインできてたんですけど何故か去年の夏からログイン出来なくて...ぴえん(;ω;) (2020年2月2日 17時) (レス) id: f38b18c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乾 巽 | 作成日時:2020年1月19日 11時