トイレの太郎さん（女）ですが何か？【地縛少年花子くん】

太郎さんの存在 ページ26

なんとか七不思議から手を引かされることは回避したけど、このままじゃ兄ちゃんが花子を祓っちまいそうだし…。花子を祓ったら先輩が悲しむだろうな。
それに、兄ちゃんに言われた台詞が気にかかっていた。

『太郎さんは特に駄目だよ。おかしいと思わなかった？太郎さんなんて、かなり昔に一時流行ったというだけの小さな噂話だ。しかも「男子トイレの三番目にいる」というだけ恐ろしさも何もないそれが、どうしてこんなに長く怪異として存在できていると思う？

普通そんな長い間があれば噂は消えて、怪異も消える筈だよ。
第一、俺も光も花子さんの話は聞いていても太郎さんなんて聞いたことがない。一度だって噂されたことなんてない。なのにどうしてこの学園の生徒は太郎さんの存在を知っていると思う。

クラスの友達に、太郎さんを知っているか聞いてみてごらん。きっと誰もが知ってるけど、誰から聞いたのか、いつから知ってるのか、答えられない筈だから』

どういうことなんだ。
不思議に思って朝登校してすぐ、横尾と佐藤を捕まえて聞いた。


「なぁ、トイレの太郎さんって知ってるか？」
「知ってるぞ。旧校舎の男子トイレの三番目にいて、三回ノックして「太郎さん、遊びましょ」って言うと呼び出せる、花子さんの男子バージョンだろ？」
「そうそう、でも男って個室使わねぇし。女子トイレの花子さんは願いごと叶えてくれるらしいけど、太郎さんは呼び出せたら話相手になってくれるらしいぞ。
でも依存しすぎると魂取られるらしいぜ」


やっぱ知ってんのか。


「オレ全然知らなかったんだけど。
そんな噂いつ流れてたっけ？」


聞き返すと、二人して顔を見合わせて首をひねられた。


「いつ……って言われても、なぁ…」
「前から知ってたのかもしんねーけど…」


その後も何人かに聞いてみると、全員が「知っている」と答えたにも関わらず、誰も噂が流れた時期、噂してた人間を知らないようだった。
むしろ、「気がついたら知ってた」というのが正しいようだ。

_______これが、兄ちゃんが太郎さんは特に駄目って言った理由…？


でもよく分からない。花子や太郎が悪い怪異じゃないって輝兄を納得させる証拠を見つけないと。
そう、例え授業をサボってでも！
芝生を匍匐前進しながら花子を観察していると、ほっかむりしてごそこそぴょんぴょんつんつん…怪しすぎんだろ。


「さっきから何やってんだ…」
「君こそ何してるの、授業中でしょ。
サボり？」

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